達成確率を用いた最適化手法による新しいロバスト治療計画方式の開発
Project/Area Number |
23K14830
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 52040:Radiological sciences-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横川 航平 北海道大学, 大学病院, 助教 (70916527)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | ロバスト治療計画 / 達成確率 / 不確実性評価 / 陽子線治療 / 不確実性 |
Outline of Research at the Start |
本研究は基準の治療計画に対して不確実性に起因する多数パターンの変形線量分布を計算し、先行研究で多く評価されている「臨床上に設定された線量制約基準を満たす確率」のほか、「基準治療計画からの線量値変動が一定の許容範囲に収まる確率」を新たに導出する。両者はロバスト性の異なる側面をそれぞれ定量的に評価できるため、治療計画者はそれぞれの確率値を基に総合的にロバスト性が最も向上するような治療計画の修正指針を効率的に与えることができる。従って、新しい側面のロバスト評価を加えた本提案手法は従来手法よりもよりロバスト性の高い治療計画を提供できると期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
おおむね順調に進んでいる。第一段階として、実際の治療計画装置ではなく、陽子線治療の照射体系を模擬した仮想空間を数値解析計算ソフト内で構築し、更に陽子線ビームの線量分布を模擬した計算式も構築した。この計算プログラム内に、本研究が着目する不確実性による影響(ビーム照射位置のズレ、ビーム通過物質内の密度誤差、模擬ターゲットや模擬重要組織の位置ズレなど)の影響を反映できるようにし、その変化パターンを多数用意して、各パターンにおける線量計算を実行できるようにした。 本プログラムのデバックも兼ね、本研究の目標である「ある不確実性(変化パターン)」に対応する達成確率分布(評価パターンに対して設定した目標値が達成されたパターン数の割合をボクセル単位で表示したもの)の妥当性を評価するため、一種類のシンプルな不確実性に対して達成確率評価を行い、これも概ね予測通りの結果を得られた。上記の結果より、本提案手法は申請時の研究目的を達成できるポテンシャルを持つと結論付けた。 次に第二段階として、当初では陽子線治療を対象に当該研究内容を進める予定であったが、諸事情により強度変調X線治療の症例を優先して対象に研究を進めた。これは陽子線治療とX線治療の特性の差異に起因して得られる結果の内容や特徴が異なるものになるが、着目する不確実性によってどのような達成確率分布が得られ、どのように治療計画を修正するべきかの知見(指針)を得られるか、という根幹については共通するため、当初の研究目的から逸脱するものではないと判断した。 この第二段階の研究において、不確実性に起因する線量分布変化への対応力が高い治療計画の新しい作成方法も発見し、これについての達成確率への影響度合(確率向上への寄与度)を現在調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)計算環境構築について。当初の予定では高性能GPUワークステーションを購入し、そこに独自の計算環境を構築する予定であるが、これはペンディング中である。本研究課題は達成確率分布によるロバスト性向上のポテンシャル評価を最優先としており、この評価自体は独自に作成した簡易計算ツールと既存の商用治療計画装置の機能で十分に行える。従って、本研究課題に関する本質を研究後、包括的計算を行うために最後に環境構築を行う予定である。 (2)研究内容について。これも当初の想定手順と異なっているが、本質的に見ればとくに問題なく進んでいる。特に、研究過程で達成確率を向上させるための治療計画の新しい作成方法について発見できたのは大きい。当初の想定では、従来通りの治療計画法で確率的に最適な最終線量分布形を提示するものであったが、本発見手法はその達成確率(分布)の最大値を一段階以上引き上げるポテンシャルが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した、達成確率向上のための新しい治療計画法の概要と効果についてまとめる。従来の治療計画法は一つの治療計画=一つの完成された線量分布を作成するのに対し、この手法は、複数(3~4つ)の小治療計画を作成し、それらの組み合わせ方により複数パターンの治療計画(線量分布)を作成する方法である。必要ある小治療計画(小線量分布)を強調して使い、必要ない小治療計画(小線量分布)を未使用とすることで、その日の患者の状態にもっとも適した治療計画(線量分布)を構築できる。X線治療・陽子線治療の両方で適用可能な方法であるため、汎用性が高い。 本テーマについて、すでに膵癌の体幹部定位放射線治療の実症例を対象に研究を始めている。膵癌は変位・変形・密度変化という3つの不確実性の影響を複合的に受けることで線量分布の変化が大きく、要求される「付与線量の可及的増加と周囲の消化管防護の両立」の実現が難しい部位である。今現在ではX線の強度変調回転照射法を対象に、変位や変形に対する有効な治療計画形を考案し、この有効性を示す段階まで来ている。 今後も引き続き、ターゲットとした不確実性の影響を軽減できるような新治療計画法の基礎体系についての理論を構築し、その理論に基づく治療計画の達成確率が従来法を大きく上回ることを示し、論文化する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)