Project/Area Number |
23K18599
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
二井 彬緒 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30984489)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | ハンナ・アーレント / 難民 / パレスチナ / イスラエル / セイラ・ベンハビブ / ジュディス・バトラー / 民主主義 / ユダヤ人問題 / ナショナリズム |
Outline of Research at the Start |
難民問題の様態の多様化に伴い、難民・強制移動研究は多角的な学際研究が必要とされ、特に政治状況の変容に応じた思想的分析が求められている。ハンナ・アーレントは自身も難民となりながら難民問題を論じた。彼女の思想は現在の広義の難民をめぐり再び注目されている。だが、アーレントの難民論には現代までの難民問題の変容を反映させた包括的な分析はない。そこで本研究は、難民をめぐりアーレント思想を受容した現代の難民論、特にセイラ・ベンハビブとジュディス・バトラーの議論を分析・整理し、その論点を体 系化する。これにより難民・国民の対等かつ友好的関係性をめぐる思考モデルの構築を目指し、多様化する難民問題の解決に資する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は難民をめぐりアーレント思想を受容した現代の難民論、特にセイラ・ベンハビブとジュディス・バトラーの議論を分析・整理し、その論点を体系化することを目的としている。研究期間の初年度は、①難民をめぐるアーレント思想の展開を通史的な見取り図として提示するために、(1)ユダヤ人問題に関する議論、(2)ナショナリズム論、(3)難民論に関する先行研究を整理する予定だった。残念ながら2023年度、この整理作業は計画通りに進めることができず、(2)ナショナリズム論、(3)難民論は整理途中にある。 ただし本年度は急遽、次年度以降に予定していた②ベンハビブとバトラーの議論の比較作業を行った。予定変更の理由としては、2023年10月以降のイスラエル・パレスチナ間の紛争激化である。アーレントの難民論をめぐってベンハビブとバトラーを比較する際、三者が共通して論じるパレスチナ問題に注目して分析を進める予定だった。23年のガザ侵攻以降、ベンハビブ、バトラーはさまざまなメディアを通してそれぞれの見解等を新たに発表してきている。本年度はそうした議論の資料収集、分析・整理に注力した。 研究実績としては、アーレント研究におけるユダヤ人問題に関する議論をまとめ、学協会で口頭発表を2件行い、学術論文を1本執筆した。これらは本研究の①-(1)アーレント思想におけるユダヤ人問題に関する受容研究の整理作業にあたる。また、パレスチナ問題、パレスチナ難民をテーマにし、かつアーレント思想に言及したベンハビブとバトラーによる2023年秋以降の議論を比較し、学術論文を1本執筆、研究会を開くなどの研究実績をあげることができた。これは本研究の②ベンハビブとバトラーの比較作業にあたる。 なお、①-(2)(3)アーレント思想におけるナショナリズム論、難民論に関する受容研究の整理は続けており、次年度以降、その成果を順次公表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由としては、まず2023年10月のハマスによるイスラエル領への攻撃・イスラエルによるガザへの軍事侵攻に伴う、難民問題の国際的な状況変動が挙げられる。アーレントは難民問題を論じる際、第二次世界大戦期間のユダヤ難民だけでなく、戦後のパレスチナ難民についても積極的に言及していた。本研究が対象としているセイラ・ベンハビブ、ジュディス・バトラーもこれまでアーレントの難民論を扱う際、パレスチナ問題に注目してきていた。2023年10月の政情変化を受け、両者ともに新たに議論を発表し、その資料収集と分析を優先したために、事前に予定していた先行研究の整理を完了させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は2023年度に積み残した①-(2)・(3)アーレント思想におけるナショナリズム論、難民論に関する受容研究の整理作業ナショナリズム論、難民論に関する先行研究を整理し、難民をめぐるアーレント思想の展開の見取り図を提示することを目標とする。また、引き続き②アーレント思想を受容して現代の難民問題を論じる、セイラ・ベンハビブとジュディス・バトラーの、特に2000-2022年の議論の比較を行う。併せて、引き続き2023年のガザ侵攻の進展とそれに対する両者の議論も追跡調査するが、2022年までの議論と総合して検討するには時間を要する可能性があるため、研究期間を当初の計画から一年延長することを検討している。
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