Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究は、人間存在を特徴づける〈心〉の失調状態を表し、かつ歴史的・普遍的な問題である精神疾患を社会的概念として捉え、文学によるアプローチを試みる。心を〈謎〉として扱い、精神医科学知識を推理手法やトリックとして作劇の基礎的構造に活用するなど、とりわけ精神疾患と親和性が高い文学ジャンルであるミステリを対象として、作品に投影された精神疾患をめぐる社会的諸問題を把握し、同時にミステリがそれらの問題に対して発してきたメッセージを読み解く。以上の分析から精神疾患とミステリの関係性を明らかにし、精神疾患をめぐる時代状況の反映と批評というミステリの果たしてきた役割を、社会背景とともに歴史的視点から探る。