近現代日本・都市公園における野宿者支援・管理に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
23K18844
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0108:Sociology and related fields
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
前田 一歩 立教大学, コミュニティ福祉学部, 助教 (10981558)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 都市公園 / 野宿者 / 計量歴史社会学 / 社会政策 / 空襲罹災 / 壕舎生活 / ホームレス |
Outline of Research at the Start |
都市公園における野宿者(ホームレス)の問題は、昭和恐慌期(1920-30年代)に野宿者が社会的な問題となって以来、今日にいたるまで公園管理にかんする主要なトピックとして存在している。公園は、野宿者を受け入れ、支援・調査の拠点となる一方で、強制的かつ巧妙な排除が行われる場としても存在してきた。すなわち公園管理の野宿者に対する態度には、両義的性格が存在するといえる。 本研究では公園管理上の重大トピックである野宿者問題について、当時の社会政策的実践に影響を与えた社会調査データを駆使しつつ、公園のこの両義的性格について探究し、公園の管理運営上の問題解決に向けて日本の公園の歴史的特殊性を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近現代日本社会における公共空間、特に都市公園が、一般利用者の権利を部分的に侵害しながらも、住居を失った人々を収容し支援する場所としての役割を獲得するにいたった過程を明らかにすることを目的とする。 この研究には2つの側面があり、ひとつには造園史研究に存在する「計画史」と「生活史」という2つの立場を、社会学の理論と方法を用いることで架橋し「社会問題史としての都市公園史」の視座を提起する、学説・理論研究的な側面がある。もう一方には、この視座を援用して①昭和恐慌期~戦後期の失業者問題、②戦時体制下・戦後復興期における空襲罹災者の住居問題を分析する、実証研究的な側面である。 その結果、①昭和恐慌期~戦後期の失業者問題については野宿者の空間占拠の追認される過程が後づけられ、②空襲罹災者の住居問題については、行政による特例的な公園の空間改変と平常時への復旧過程が明らかにされる。この分析過程では、公園の計画者や管理主体の資料分析と同時に、当時の社会政策的実践へと影響を与えた社会調査データの復元と分析が行われ、本研究の2つの軸をなしている。2023年度においては調査資料の復元分析の下準備をしつつ、周辺資料の質的読解が進められた。具体的には、関東大震災後・昭和恐慌期・戦時中および戦災復興期の困窮者に対する社会政策全般のなかに、住居を失った者(野宿者)の対策がいかに位置づけられていたのか、公園野宿者をとりまく背景についての分析を進めた。その背景のもと公園野宿者がいかなる境遇にいたのかを、歴史資料および社会調査資料(当時の報告書等)をもとに基礎的な事実を明らかにしつつ、当時の統計データの復元と再分析をもとに、これまで明らかにされてこなかった明瞭な像を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度においては資料調査を基本としつつ、社会調査データの復元に向けた作業を実施した。まず昭和恐慌下の東京における公園野宿者問題についての分析については、関東大震災の復興計画以降、東京の公園行政の中心的役割を担った井下清の言説を分析し、そのなかに野宿者と一般利用者の共存をめざそうとする管理思想が存在することを提示し、学会等における報告を実施した。この成果の一部を使用した学会報告に対しては「日本社会学理論学会奨励賞」を受賞している。また、東京・横浜ついで名古屋についての空襲関連資料を、戦後の公園計画との関連で収集・調査し、分析を進めている。 社会調査資料の復元については「都内壕舎生活者調査」(1950)および「日雇労働者 職歴・生活歴調査」(1951)の画像データの整備を進めている。ただし代表者の研究機関異動があったことから、当初の目標であったデータセット完成に向けた整備作業については、着手できないままであり遅れが発生している。上述の歴史資料の分析作業においては順調に進展している一方で、復元二次分析においては進展が少なく、総合的に「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度以降は、引き続き、上記課題についての文書館における資料調査と社会調査データの復元分析に向けて研究活動を進める。 とくに注目するテーマとして、関東大震災および第二次大戦中の空襲に際して、六大都市(東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸)の公園に設置されたバラック小屋の形成から撤収までの過程をまとめる作業を進める。 さらに、代表者の研究機関異動にともなう作業環境の(再)構築を、東京大学社会科学研究所附属社会調査データアーカイブ研究センターの佐藤香教授の協力・指導のもとに進める。そのうえで、調査票画像データの確認と完成にかかわる前年度の積み残し作業を完了させる。画像データが完成したのちには、表計算ソフトへの入力作業を進めることで、調査データをコンピュータで計算可能なデジタルデータに変換し、分析を実施する。作成したデータセットについては佐藤香教授と相談のもと、東京大学社会科学研究所SSJデータアーカイブへの寄託を行い、調査データを広く他の研究者への公開を目指す。なお空襲罹災者については復元分析中の「壕舎生活者調査」(1950)の周辺資料および同時代資料の分析を進める。こうして従来の文書館調査を中心とする歴史研究と、計量歴史社会学的研究の相補的な分析を実施する。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)