Project/Area Number |
23K18878
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
:Education and related fields
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
上見 めぐみ 東洋大学, 文学部, 講師 (10979743)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | クリティカルシンキング / 英語授業研究 / ラーニングログ / 論理的思考 / 言語活動の促進 / クリティカル思考表現 / 大学英語 |
Outline of Research at the Start |
近年、大学生の英語授業を通したクリティカルシンキング(以下、CT)力の育成が重要視されているが、その効果を示す授業実践の研究例は未だ少ない。本研究は、実践的データを軸に、大学生のCT力を育成するラーニングログの開発とその授業実践における効果を検証する。1年目は、大学に入学したフレッシュマンのCT力の実態調査を実施し、学生が英語にて論理的かつ明確に自分たちの考えを表現することに困難を示す背景を明らかにする。2年目の実践研究では、これらの示唆をもとに、ラーニングログに関する先行研究を参考にしながら、学生の授業内容の理解と言語活動を促進する英語授業法を開発、その効果をCT力の発達に着目して検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はブルームの分類学の lower-order thinking skills (LOTS)に分類されている「理解」の言語的な側面(説明する、要約する、言い換えるなど)に着目し、言語を通じた明瞭かつ合理的・論理的な自己表現・自己主張をクリティカル・シンキング(CT)の最重要スキルとして定義している。
初年度の前半は、本研究の対象者であるフレッシュマンの大学入学前における言語活動を中心としたCT学習経験を自由記述式アンケートにて調査した。このアンケート調査の結果、フレッシュマンの多くは、中高の英語授業で展開されていた自己表現・自己主張に重きを置く「話す」活動からCTスキルを得ていると認識していることが分かった。しかしこれら学生の記述からは、論理的思考や分析力などのCTに直接関連する具体的なスキル獲得の言及はあまり見られなかった。むしろ次に回答が多かった卒業論文などのより学力的に挑戦を強いられる「書く」活動(日本語における)を効果的なCT学習経験と挙げた学生から、論理性・合理性を含むCT関連スキル習得の言及が目立った。
初年度の後半には、学生の言語を通じたCT表現力を、英語での意見型パラグラフ・ライティングを通じて評価した。これら意見型パラグラフでは、質問の意図を正確に理解し、明瞭性と一貫性を持って自分自身の主張を提示する「効果的なメイン・アイデア」の欠落や、読者にこのメイン・アイディアを再認識させる「効果的な結論」の不足さなどが目立った。これらの課題は、学生の英語パラグラフ構造に対する理解が不十分であることを示唆している。それと同時に、英語という言語自体が持つ明確な自己主張・自己表現を基盤とする社会文化的・教育的背景が、日本語のそれとは異なるため、言語を通じたCT表現に対する認識の違いを生んでいる可能性も考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、CT研究において注目が集まる higher-order thinking skills (HOTS)の養成ではなく、ブルームの分類学の低次元に位置する「理解」を中心としたlower-order thinking skills (LOTS)の言語的側面の重要性に着目している。言語を使った明確かつ合理性・論理性を軸とした自己表現・自己主張をCT表現の最重要の要素として捉えている。
初年度は当初の計画通り、oral communicationを履修するフレッシュマンを対象としたCT実態調査を進めることができた。フレッシュマンの大学入学前における言語活動を通じたCT学習経験を探ると同時に、意見型パラグラフ・ライティングを通じた学生のCT表現を評価・分析することができた。学生の意見型パラグラフ・ライティングの評価分析からは、学生の英語パラグラフ構造に対する知識・理解の不足さと同時に、英語と日本語の社会文化的・教育的背景の違いからくる言語そものに対する認識の差が示唆された。これらの結果については、学会の学術誌・紀要を中心に論文掲載をしている。(現在投稿・レビュー中の論文もあり。)今後は発表活動を中心に、結果をもとに同じテーマの研究者・実践者等と意見交換などを進めていく。ラーニングログを活用した英語授業実践の予備調査からは、以下のことが分かっている。学生の総合的な言語力の伸びにより、彼らが表現する理由・根拠などの具体化・詳細化は大いに観測されるものの、明瞭かつ一貫性を持つ「効果的なメイン・アイディア」や「効果的な結論」の表現には、未だ課題が残ることが示唆されている。このように、概ね当初の予定通りに本研究を進めることができているため、現在の進捗状況としては順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、学生のCT表現力を高めるラーニングログ活用の英語授業の効果検証を本格的に開始していく。より効果が見込めるCT育成のためのラーニングログ開発を進める。初年度のフレッシュマンのCT力実態調査とラーニングログ活用の授業実践・予備調査の結果をもとに、次年度に活用するラーニングログと、それを用いた英語授業のコース・デザインを見直し、バージョンアップを図っていく。修正を加えたバージョンを、次年度入学のフレッシュマンが履修するOral Communicationの授業に採用し、実践を展開していく。事前・事後テストとして意見型パラグラフ・ライティングを用い、学生のCTに対する自己評価の変化も検証する。ラーニングログをベースとした大学英語授業のデザイン効果を包括的に検証していく。
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