人工高分子PEGの皮膚塗布により惹起される抗PEG抗体誘導現象のメカニズム解明
Project/Area Number |
23K19431
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0801:Pharmaceutical sciences and related fields
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
高田 春風 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 特任助教 (10986714)
|
Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | ポリエチレングリコール(PEG) / 皮膚塗布 / 経口投与 / 抗PEG抗体 / ポリエチレングリコール |
Outline of Research at the Start |
人工高分子であるPEGは毒性が無く、免疫応答を誘発しないため香粧品や食品、医薬品等で使用されている。しかし、申請者らは、PEGをナノ粒子表面やタンパクなどに修飾した場合、抗PEG抗体が誘導されることを報告してきた。さらに、申請者らは最近、化粧品中の遊離PEGの皮膚への塗布によっても抗PEG抗体が誘導されることを確認した。これまで遊離PEGに対する免疫反応の惹起は報告されておらず、その機序も不明である。本研究では「遊離のPEGを免疫系がどのように認識して抗PEG抗体を分泌するのか」を明らかにし、抗PEG免疫の全貌解明の一端を担うことで、PEG修飾製剤の安全・安心な使用に寄与することを目的とする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、以前研究代表者らが明らかとした、PEG誘導体含有化粧品を30日連続して塗布したマウスで顕著に抗PEG抗体が誘導される現象(J. Control. Release, 354, 260 (2023))、およびPEG修飾リポソームを単回経口投与されたマウスで抗PEG抗体が誘導される現象を基に、皮膚塗布あるいは経口投与されたPEGがどのように抗PEG抗体を誘導するかを明らかとすることで、PEG修飾製剤の安全・安心な使用に寄与することを目的としている。 令和5年度は、経口投与の検討については、PEG-DSPE(PEG分子量:2,000)修飾リポソームの単回経口投与は過去の検討と同様に抗PEG抗体を誘導した一方で、PEG-DSPEのみから成るPEGミセル、およびPEGそのものであるモビコール(PEG分子量:4,000)の単回経口投与は抗PEG抗体を誘導しないことを確認した。PEGミセルは、静脈内投与でも抗PEG抗体を誘導しなかった。皮膚塗布の検討については、PEG誘導体含有化粧水を10日間毎日皮膚塗布し、血清中の抗PEG抗体を経日的に評価したところ、興味深いことに、抗PEG抗体量は塗布開始日から6~7日目にかけて増加し、その後一度減少した後、再び増加するという二相性を確認した。加えて、塗布終了後にも抗体誘導は持続していた。抗体誘導に関わる臓器を確認するべく、脾臓摘出マウスを用いて同様の検討を行ったところ、第1相のピークは有意に低下した一方、第2相の抗体誘導は維持された。以上の結果から、経口投与されたPEGについては、リポソームのように他分子と複合体を形成している場合に抗PEG抗体を誘導することが示唆された。一方で、皮膚塗布されたPEGについては、遊離の状態でも抗体を誘導し、短期の誘導には脾臓が、中期~長期の誘導には脾臓以外の組織に存在する免疫細胞が寄与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、PEG誘導体含有化粧水やPEG含有内服剤であるモビコールを用いて抗PEG抗体の誘導について検討を行った。また、PEG誘導体含有化粧水による早期の抗PEG抗体の誘導反応に脾臓が寄与していることを明らかとした。一方で、蛍光標識PEG修飾リポソームを調製し、経口投与時の体内分布について、血清についてはプレートリーダーを用いて、脾臓・肝臓については切片を作成し、蛍光顕微鏡を用いて評価したが、分布量の少なさからか、蛍光を検出できなかった。また、皮膚塗布された遊離PEGについても、蛍光標識PEGを用いて表皮に浸透していることは確認できたが、血中・臓器移行性については確認できていない。しかし、令和5年度の検討によって、皮膚塗布されたPEGによる抗PEG抗体誘導が二相性を示すというユニークな結果が得られ、令和6年度には指導学生が5月の薬剤学会、6月のDDS学会にて口頭発表を予定している。令和6年度はB細胞以外の抗PEG抗体の誘導に関わる免疫細胞の特定、遊離PEGによって誘導された抗PEG抗体のPEG修飾製剤(PEG修飾タンパク製剤やPEG修飾リポソーム製剤)への結合性などについて検討を行う予定であったが、それらに加えて、令和5年度に検討を完了できなかったPEGの分布について、引き続き検討を行う必要があるため、「(2)おおむね順調に進んでいる」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、皮膚塗布された遊離PEGに対する抗PEG抗体誘導現象のメカニズム検討を主軸に、経口投与されたPEG修飾リポソームによる抗PEG抗体誘導現象のメカニズムについても検討を進めていく。具体的には、PEGの分布について、蛍光標識による評価では蛍光が検出できない可能性が令和5年度の検討によって考えられた点から、間接的な検討ではあるが、いずれの臓器・組織に存在する抗PEG抗体分泌B細胞が活性化しているかについて、フローサイトメトリーを用いて評価する。また、遊離PEGの皮膚塗布による抗PEG抗体の誘導に寄与する免疫細胞を特定すべく、T細胞機能欠損モデルマウスであるnudeマウス、B細胞・T細胞機能欠損モデルマウスであるSCIDマウスを用いた検討を行う。また、各種細胞障害剤(クロドロネート封入リポソーム(静脈内投与):肝・脾の貪食細胞の枯渇、エンドキサン(腹腔内投与):腹腔のT細胞、B細胞の枯渇、Doxil(静脈内投与):肝マクロファージの機能抑制等)を用いることでも、遊離PEGによる抗PEG抗体の誘導に寄与する細胞の特定を試みる。加えて、遊離PEGの皮膚塗布およびPEG修飾リポソームの経口投与によって誘導された抗PEG抗体の反応性について、PEG修飾リポソームの静脈内投与によって誘導された抗PEG抗体と同等の反応性であるか、Doxil(抗がん剤封入PEG-Lip)、mRNA搭載PEG修飾脂質ナノ粒子(COVID-19 mRNAワクチンを模倣)、ジーラスタ (PEG修飾タンパク)を用いて検討を行う。
|
Report
(1 results)
Research Products
(3 results)