Project/Area Number |
23K20559
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Project/Area Number (Other) |
21H00649 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Professional Institute of International Fashion |
Principal Investigator |
金谷 美和 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 教授 (90423037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上羽 陽子 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 准教授 (10510406)
柴田 誠 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (40799607)
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90212026)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,030,000 (Direct Cost: ¥13,100,000、Indirect Cost: ¥3,930,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
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Keywords | 布工芸品の継承 / 自然資源の知識と管理 / 材料の加工技術 / 材料を採取する生態環境 / 生産者のライフヒストリー / 安曇野天蚕 / 丹後藤織り |
Outline of Research at the Start |
本研究は、地域や民族の生活文化や社会関係に根ざした布工芸品が、グローバル化の進展でどのように継承され、変化を遂げてきたかを明らかにするものである。日本を含むアジア地域を対象とし、①生産者から布工芸品の生産・流通・消費にかかわるライフヒストリーを聞き取り記録する。②さらに、自然資源の管理、加工技術に注目し、生態学、森林科学、テキスタイル研究の研究者をまじえた共同調査を実施する。生産者の語りによって得られる過去や現在についての事象を、自然科学的手法による検証と組み合わせることによって、布工芸品の継承と変化の諸相をより立体的、複合的に明らかにする視座を開拓し、物質文化研究の新たな研究領域を提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、布工芸品がグローバル化の進展のなかどのように継承され、変化を遂げてきたかを明らかにするものである。特に布工芸品の生産者がグローバル化によって変容する世界に対応する際に、布工芸品を支える自然資源の知識と管理、加工技術がどのように変化してきたのかを明らかにするものである。 2023年度は、引き続き、メンバー全員が長野県安曇野市において天蚕の飼育・製糸・製織に関する現地調査に携わった。合計11回の現地調査をおこない、以下のようなデータを収集することができた。1)天蚕飼育の年間通しての観察をおこない飼育工程の時期や内容について記録、2)クヌギ畑にカメラとデータロガーを設置し、クヌギ畑の通年の画像データと気象データを収集、3)天蚕飼育・製糸・製織に関る人々に、天蚕の関わりを中心とした聞き取りをおこない、ライフヒストリーを収集、4)天蚕特有の繰糸技術の習得により、技術上の特徴を同定。さらに、5月と10月に対面で研究会を開催し、調査成果の共有と成果報告にむけての議論をおこなった。 また、研究対象の一つである京都府の藤織りについて金谷が丹後藤織り保存会を対象にコミュニティの調査を引き続きおこなった。その成果の一部は、2024年度にTextile Society of Americaで発表予定である。金谷が2022年度におこなったインド、グジャラート州における染織品アジュラクの生産者の現地調査の成果は、2023年度に学会誌に査読付き論文として、また博物館季刊誌の原稿として発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、新型コロナウィルスの感染拡大により、予定していた海外での共同調査が難しくなり、その代替として安曇野市の天蚕飼育・製糸・製織を研究対象とすることになった。研究対象の変更はあったものの、本研究プロジェクトの目的とテーマに合致した研究対象を得ることができ、昨年度は十分な現地調査をおこなうことができた。昨年度は、天蚕を布工芸品にするための工程として、①天蚕の飼育、②繭を糸にする、③糸を布に織る、の3つに分けられ、現地コミュニティは3つのグループに分かれて技術伝承と作業をおこなっていることが分かった。明らかになった知見をもとに、今年度は、①の天蚕飼育については、クヌギ畑の管理と、天蚕の1年をとおしたライフサイクルに対応した人間の働きかけについて観察する、②については、長野で技術展開したケンネル式による繰糸技術について明らかにする、③については天蚕織物の実物資料の検討や、織り手へのインタビューにより明らかにする、という調査計画を立案した。これに沿って本年度は11回の現地調査を行い、予定していたデータの収集をすることができた。2回の研究会によってメンバー同士が研究テーマを共有するだけでなく、最終年度にむけた成果発表の媒体や形式についても議論をすすめることができた。 京都府宮津市における藤織りについては、金谷が現地調査を本科研で4回、別プロジェクトで3回、合計7回おこなった。保存会役員会合や藤織り製作作業に参加し、聞き取り調査をおこなった。それによって技術伝承が直面する課題を明らかにし、2024年11月に開催される国際学会で発表する準備をすすめることができた。インドにおける調査研究についても査読付き論文を含む研究成果をあげることができた。これらの点で、本年度は着実に成果につながるような研究をすすめることができ、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)研究打ち合わせ(年に3回ずつ実施):メンバーが研究組織全体としての問題意識を共有すると共に、現地調査における知見をもとに議論をおこなうために、研究打ち合わせを実施する。最終年度においては、成果取りまとめのため成果報告会とライティングアップを中心におこなう。 2)フィールド調査1:共同調査地(長野県安曇野市、安曇野市天蚕振興会)において、野生種の蚕である天蚕(ヤママユガ、学名はAntheraea yamamai)飼育と製糸・製織を対象に、個別のテーマによるフィールド調査を行う。調査項目は、①生産・流通・消費に関する生産者のライフヒストリー(金谷)、②自然資源管理のルールや権利、自然資源管理の在地の技術(竹田)、③植生の特徴と土地利用の変遷、資源利用量と回復速度の定量的評価(柴田)、④使途に応じた素材の選択、自然資源から糸への加工技術(上羽)である。2024年度は、成果にむけてデータを精査しながら調査をすすめる。 3)フィールド調査2:調査地(京都府宮津市上世屋、丹後藤織り保存会)において、金谷と柴田は、藤織りの素材であるフジ(学名はWisteria floribunda)の資源管理について調査を行う。 4)フィールド調査3:調査地(インド、グジャラート州カッチ県)において、布工芸品の生産にかかわる水資源管理に関して、金谷が調査をおこなう。 5)成果発表:現地調査によって得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。京都府丹後の藤織りの素材の管理に関して明らかになったことを、2024年11月に開催のTextile Society of Americaの研究大会において金谷・柴田が発表予定であり、論文を投稿準備中である。さらに、2025年度には、安曇野市天蚕について、全メンバーが執筆する報告書の出版をおこなう。
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