クライオ電顕を用いた鉄錯体輸送体の基質認識と輸送機構の解明
Project/Area Number |
23K23828
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Project/Area Number (Other) |
22H02564 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43020:Structural biochemistry-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山形 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20463903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 透 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40359641)
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (50414123)
村田 佳子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 特任研究員 (60256047)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
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Keywords | クライオ電子顕微鏡 / ムギネ酸 / 膜輸送体 / 鉄 / 膜タンパク質 / 鉄錯体 / トランスポーター / 植物 |
Outline of Research at the Start |
現在、陸地の約1/3は石灰質土壌と呼ばれる耕作に適さない不良土壌である。この石灰質土壌では鉄は難溶性の三価鉄として存在し、植物の成長を著しく阻害する。ムギやトウモロコシは、根からムギネ酸と呼ばれる物質を排出し石灰質土壌での三価鉄の吸収を可能としている。ムギネ酸は新たな肥料として注目されており、より安価で安定な類似化合物も開発されている。ムギネ酸による鉄の吸収はYS1と呼ばれる膜輸送体が担っている。本研究ではクライオ電子顕微鏡法を用いてどのようにYS1がムギネ酸鉄を認識し輸送するのかについて明らかにするとともに、より効率的で安価・安定なムギネ酸類似化合物の開発につなげることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法によってオオムギ由来の鉄錯体輸送体(Yellow stripe1; YS1)の立体構造を決定した。構造解析の結果、YS1はコレステロール類似物質(CHS: コレステロールヘミコハク酸)が仲介した二量体を形成していた。YS1プロトマー構造は基質結合に関わるコアドメインと二量体界面を形成する足場ドメインに分かれ、両ドメイン間にキャビティを形成していた。YS1がCHS依存的な二量体を形成することをサイズ排除クロマトグラフィーによって確認し、さらに蛍光を用いた熱変性解析によりCHSがYS1の熱安定性が向上することを確認した。次に、YS1と鉄錯体(ムギネ酸鉄; Fe-DMA)との複合体構造をクライオ電子顕微鏡単粒子解析法によって決定した。YS1は外向き開口構造を形成しており、Fe-DMAはキャビティ内の細胞外側近くの結合ポケットに結合していた。YS1は、鉄と結合したムギネ酸の骨格構造を認識していることを明らかにした。基質認識に関わる残基の変異体を作製した。放射性ラベルした鉄とムギネ酸との複合体の取り込みを昆虫細胞を用いたアッセイ系によって解析した結果、変異体で取り込み活性が失われ、構造解析で見られた相互作用が正しいことを証明した。さらに人為的なムギネ酸鉄類縁体(Fe-PDMA)との複合体構造も明らかにした。Fe-PDMAはFe-DMAと全く同じようにYS1と結合しており、PDMAがDMAの代替として働くことを示した。YS1は足場ドメインに対しコアドメインが剛体様に動いて、外向き開口から内向き開口構造に遷移することが示唆された。さらに、分子動力学計算によってキャビティ内の3つのアスパラギン酸残基のプロトン化が基質の輸送に必要な構造変化を引き起こすことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請では、①YS1とムギネ酸鉄複合体の高分解能構造解析による基質認識機構の解明、②ムギネ酸類縁体の認識機構の解明と更なる化合物デザイン、③ナノディスクへの再構成を利用したYS1の輸送における動的構造の解明、の3つの研究計画を遂行する。①についてはYS1とFe-DMAとの複合体の構造解析によって解明された。また、②に関してもFe-PDMAとYS1との複合体の構造解析により、少なくとも一つの類縁体の認識機構が解明され、確かにPDMAがDMAの代替になることを示した。従って、3つの研究計画のうち2つまで進捗したおり、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、③ナノディスクへの再構成を利用したYS1の輸送における動的構造の解明を進める。輸送の機構を解明するには、基質を膜内に取り込んだ内向き開口構造を捉える必要がある。膜タンパク質の動的構造を捉えるにはナノディスクのような脂質環境下に再構成するのが有効である。ナノディスクへの再構成には脂質とMSP(membrane scaffold protein)の選択が重要である。YS1は二量体構造を形成し、計28本のヘリックスからなる直径120Åの大きな膜貫通部位を持っている。従って、大きな脂質ディスクが形成可能なMSPであるMSP2N2や、共有結合により環状化したMSPであるcNWが有効であると考えられる。ナノディスクに再構成されたYS1にムギネ酸鉄を加え、さらにYS1がプロトン駆動型の膜輸送体であることを考慮し、pHを酸性にシフトさせて内向き開口構造に遷移させる。得られたサンプルについてクライオ電顕を用いて高分解能構造を得る。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Structural basis for activation of DNMT12022
Author(s)
Kikuchi A, Onoda H, Yamaguchi K, Kori S, Matsuzawa S, Chiba Y, Tanimoto S, Yoshimi S, Sato H, Yamagata A, Shirouzu M, Adachi N, Sharif J, Koseki H, Nishiyama A, Nakanishi M, Defossez PA, Arita K
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Journal Title
Nat Commun.
Volume: 13 (1)
Issue: 1
Pages: 1-11
DOI
Related Report
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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