Project/Area Number |
23KJ0448
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 10030:Clinical psychology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下村 寛治 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 楽観性 / 個人内変動 / 信念更新バイアス / 強化学習 / 事前信念 |
Outline of Research at the Start |
抑うつ気分の持続はうつ病の主要な症状の一つであるが,その認知神経学的メカニズムはいまだ明らかではない。本研究では,将来に対しての一般的な予測のポジティブさを表す要素としてstate optimism (状態楽観性) に着目し,状態楽観性,学習におけるバイアス,抑うつ気分という3つの要素がどのように個人内で経時的に関連しているのかを明らかにすることで,抑うつ気分の変動メカニズムを計算論的に(つまり,数理モデルを用いて)説明することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度では,(1)状態楽観性の個人内変動の実態についての研究成果の公表と,(2)状態楽観性の個人内変動と学習の関連の検討を実施した。 楽観性はこれまで個人の「特性」として,すなわち個人内で時間的に安定したものとして扱われることが多かったが,その一方で,時間や経験に応じて個人内で変動する「状態」としての側面を持つ可能性も示唆されていた。本年度では,昨年度に実施した縦断調査(同一個人に対して複数時点での調査を実施すること)の結果をまとめて,楽観性が実際に日常生活下の個人内で数週間という短いスパンで変動すること,およびその変動が気分や日常生活の質における変動と関連することを示した論文を国際誌にて公表した。本研究により,これまで特性として扱われてきた楽観性が,実際は状態的な側面を持ち個人内で揺らいでいることを初めて実証的に示すことができた。 続いて,楽観性のような一般化された(抽象的な)将来への予測がどのようにして変動するのか,およびそうした変動が持つ役割を調べるため,楽観性の個人内変動と予測誤差(予測と実際の結果との差分)に基づいた学習の関連を検討した。具体的には,楽観性を上昇させる介入の前後で楽観性,信念を更新する際のバイアス,そして報酬確率についての事前信念を測定し,それらがどのように関連し合うのかを調べた。現時点では予備的な結果ではあるが,楽観性の個人内変化と報酬確率の事前信念における個人内変化が正の関連を持つことを示唆する結果が得られている。すなわち,楽観性の変化に伴って,新奇な刺激に対して報酬を期待する程度も変動するということが示唆された。これまでに得られた結果を複数の研究会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた国際誌での論文の発表を達成でき,かつ,状態楽観性の個人内変動と学習との関連を検討する介入研究についても,事前登録を行ったうえですでにほとんどデータの収集および分析が完了しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,2024年度に実施した介入研究を完了させる。具体的には,事前登録したサンプルサイズに到達するまで参加者を集め,データ分析を完了させる。そののち,成果をまとめて国際誌での公表を目指す。 当初は楽観性の変動,予測の更新におけるバイアス(予想よりも良かった結果と悪かった結果からの学習のバランスにおける歪み),抑うつ気分の3変数の関連の検討へと発展させる予定であったが,介入研究の途中経過からは,楽観性の変動と予測更新のバイアスとの間には強い関連が見られなかった。そこで方針をやや転換し,介入研究において楽観性の変動と強い関連の見られた報酬確率の事前信念に着目した研究へと発展させる。具体的には,楽観性のような一般化された予測と個別具体的な文脈における学習との相互作用の詳細を明らかにし,その相互作用と抑うつとの関連を検討する。個別具体的な文脈における体験をどのように一般化して,同時に一般化された予測が個別具体的な文脈における学習にどう影響するのか,およびその抑うつ気分・抑うつ傾向との関連を,縦断研究によって検討する。
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