Project/Area Number |
23KJ0604
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大熊 光 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ラシュバ効果 / 極薄膜 / 酸化物 / スピン軌道相互作用 / 界面 / ペロブスカイト酸化物 |
Outline of Research at the Start |
ラシュバ効果とは、薄膜・界面等の2次元材料で面直な電場をかけた時、電子の運動方向に応じてスピンが揃う現象であり、磁場を必要とせずにスピンを電流で読み出せる等、磁気読み出しデバイスの省エネルギー化には欠かせない。また、2次元材料に金属を用いれば、スピン流を流しやすい事や、金属本来の高いキャリア濃度を活かした強い電場(ラシュバ効果)形成が期待される。そこで本研究では、金属伝導酸化物単体と金属伝導酸化物・半導体基板界面といった金属材料ベースのラシュバ界面を新たに作製する。その上で、ラシュバ効果の電場制御、電流・スピン流変換効率の導出、新奇量子現象の観測を目指し、ラシュバ系特有の新しい物理を創出する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)金属伝導酸化物単体と金属伝導酸化物・半導体基板界面といった金属材料ベースのラシュバ界面を新たに作製する。(2)その上で、ラシュバ効果の電場制御、電流・スピン流変換効率の導出、新奇量子現象の観測を目指し、ラシュバ系特有の新しい物理を創出することである。 (1)については、重い元素を含む準安定な伝導性酸化物薄膜SrNbO3を作製し、これまで明らかにされてこなかった厚さ10nm以下の極薄膜の輸送特性を開拓した。その結果、D'yakonov Perel'型のスピン緩和機構を示しラシュバスピン軌道相互作用が支配的であること、これまでの伝導性酸化物の中で最大のラシュバスピン軌道相互作用を有することを明らかにした。酸化物において、強いラシュバ材料は2種類の材料間の界面で開拓されてきたが、1種類の単膜では初であり、設計の自由度も格段に大きい。実際、SrNbO3と酸化物半導体KTaO3の界面で高いキャリア濃度を持つ新奇な2次元電子ガスを発見し、電場なしで酸化物界面系で最大クラスのラシュバスピン軌道相互作用を有することを明らかにした。(2)についても、上述のSrNbO3/KTaO3界面系にイオン液体ゲーティングによる強電場を印加することで極低温で100倍以上伝導度を変調でき、界面のキャリアの減少と共に、スピン緩和長が3倍近くまで変調できることがわかった。ゲート制御可能なラシュバ界面の実現である。残り1年で、伝導性酸化物単体のラシュバ効果の電場制御、スピンホール磁気抵抗測定によるスピンホール角の導出を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)まず、金属材料ベースの酸化物ラシュバ界面の作製については、酸化物極薄膜の中で最大のラシュバパラメータを達成した結果が、査読付き国際論文誌Physical Review Materials誌に出版され、国際的にも十分評価されている。また、伝導性極薄膜と酸化物半導体の界面での新奇な2次元電子ガスの輸送特性も明らかにし、目的は過不足なく達成された。(2)上述のラシュバ系での電場によるラシュバ効果の変調も、界面系では既に実現されており、おおむね計画通りに順調に進展している。今後、極薄膜単体での電場制御や、スピン流物性の開拓を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
伝導性酸化物単体のラシュバ効果の電場制御については、SrNbO3超極薄膜に対して電気二重層トランジスタを作製し、イオン液体ゲーティングを行う。必要に応じて、バックゲーティングを試みたり、極薄膜でも乱れの少ないSrVO3等の他の材料を用いて実施する。スピンホール角の導出については、SrNbO3の上に、強磁性体CoFeBを堆積させた、CoFeB/SrNbO3で、室温と極低温でスピンホール磁気抵抗測定を行いスピンホール磁気抵抗由来の信号が見られるかどうかを検証する。必要に応じて、既にある程度強いラシュバ界面が働くとあらかじめ期待される、界面ラシュバ系でのスピン流物性の実験を行う。例えば、CoFeB/SrNbO3/SrTiO3でスピンホール磁気抵抗の測定に取り組む。
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