Project/Area Number |
23KJ0679
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 基 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | エチオピア / エチオピア正教会 / 婚姻 / マリア信仰 |
Outline of Research at the Start |
本研究は東アフリカのエチオピアを中心に信仰されるエチオピア正教会の宗教史研究である。エチオピア正教会の特異な点として、複数の妻を持つ慣習と、一夫一妻制という教義が相反するものであったと考えられてきた。しかし、実際は単純な対立関係ではなく、むしろ両者は社会の中で共存して今日まで繋がっていると考えられるのではないだろうか。本研究計画では 15世紀から20世紀に渡るまで、エチオピア正教会の婚姻の規定をめぐる歴史を探ることで、婚姻制度や宗教状況、ナショナリズムといったさまざまな動きに影響を受けるエチオピア正教会史記述を成立させることを目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、エチオピア正教会文化圏における婚姻規定について、14-16世紀の事例を分析した。分析の対象としたのは、聖母マリアの奇跡譚である。従来の研究ではエチオピア正教会におけるマリア信仰は、王権が自らの権威の正当化に用いる公的な信仰と民間伝承の影響を受けた民衆の伝承の二つの側面を持つと考えられていた。これまでのマリア信仰と婚姻の関係についての分析は、前者の影響が大きく、宮廷内における単婚化とマリア信仰の活性化を結びつけていた。 しかし、この分析は複数妻帯を実践してい他ことを踏まえれば不十分であると考えられる。したがって、2023年度はこれまで民間伝承に属するとされたマリア奇跡譚の中の婚姻を取り扱ったエピソードを分析した。その結果として、マリア奇跡譚の中には、複数妻帯などの宗教的な罪について、修道士が罰を与えることを保留させ、マリアの判断に任せるという論理があることを発見した。 次に、この論理を裏付ける議論を探るために、王ザルア・ヤアコブのマリア論『タアムラ・マルヤム』の分析を行った。『タアムラ・マルヤム』は、マリアがどのような性質を持つかを論じるのみならず、エチオピア国内の教会の実践についての批判と改善が含まれていた。したがって、ザルア・ヤアコブがマリア信仰を重宝した理由が、聖職者や修道士を上回る権威としてマリアを位置付け、自らの宗教的事象への介入を正当化することにあったことが明らかになった。 上記の二つの発見により、マリア信仰と婚姻の関係について次のことが新たに明らかになった。一つは、民間伝承の影響が強いと考えられたマリア奇跡譚にも王権の意図を反映する要素があったこと、もう一つはマリア信仰は単婚を進展させるのみではなく、複数妻帯を黙認させる動きも同時に内包していたということである。 本研究の成果は、2024年度に発行予定の『東京大学宗教学年報』に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画における一年目の目標であった、14-16世紀のエチオピア正教会における婚姻状況について、どのようにして、キリスト教の宗教規定上の複数妻帯の禁止と複数妻帯の実践の対立を捉えていたかマリア信仰の分析を通して明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究では、14-16世紀の婚姻状況について、複数妻帯の禁止と実践をめぐる議論についてエチオピア地域内の状況について概観することができた。2024年度においては、研究計画の通りに16-17世紀に時代を進め、ポルトガルからエチオピアを訪れた宣教師たちによる批判と、それに対する反乱、特に女性による反乱に着目して、婚姻をめぐる問題がどのようにエチオピア正教会のアイデンティティをめぐる問題に変質かしていくかを分析する予定である。
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