Project/Area Number |
23KJ0682
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 61040:Soft computing-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今田 凜輝 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2025: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 折紙 / メタマテリアル / 力学系 / 保存系 / 自己相似 / topological mechanics |
Outline of Research at the Start |
折紙メタマテリアルとは、幾何学に基づいた特異な物理的特性を備えた周期的な折紙構造である。従来の折紙メタマテリアルは、折りに対称性を仮定した一様な折りに基づいて設計されてきた。近年、非一様な折りが、一様な折りでは実現不可能な現象・性質を引き起こすことが確認されつつある。しかし、非一様な折りを統一的に扱うモデルは未開拓であり、その理解は進んでいない。 本研究では、非一様な折りに基づく折紙メタマテリアルの設計論の構築を見据え、非一様な折りの統一的な数理モデルとして、折紙の力学系を提案する。折紙の力学系の解析により、非一様な折りの数理構造を解明するとともに、その物理的特性と数理構造との結びつけを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、折紙工学/科学の文脈で盛んに研究されてきた、対称性を持つ折線パターンに焦点を当て、力学系モデルを用いてそれらの非一様な折りの数理を解析した。主結果として、(1)折紙テセレーション(対称性が並進操作で表される折線パターン)による円筒折紙の力学系が保存系であり、この性質が円筒折紙の“うねり”を生み出していることを解明した。一方で、(2)折線パターンの対称性が並進に加えてスケール操作で記述される場合、系が保存性を失い、変形の局在・周期倍分岐によるカオス・折りモードの切り替えによる支配力学系のスイッチ等、新規現象が生じ得ることも明らかにした。さらに、 (3)ハーバード大学の研究グループを訪問し、力学系モデルと機械的メタマテリアルの物理学(topological mechanics)との繋がりを見出した。 (1)(2)は、折紙の力学系の性質が、折線パターンの対称性を強く反映することを示している。(1)は、メタマテリアル設計のベースとして広く用いられる折紙テセレーションにおける普遍的な数理構造として、保存性の存在を示唆する結果である。保存性は、円筒折紙における“うねり”のように、構造のある一部分の変形が全体に減衰せず伝達し得るという、工学的にも有用な性質を付与している。一方で、(1)は折紙テセレーションで実現可能な性質が、保存性に制限されることも示唆している。 これに対し(2)は、折線パターンの対称性をスケール操作の導入により一般化することで系が保存性を失い、折紙テセレーションでは生じ得ない現象を多数実現可能になることを示している。以上、(1)(2)を通じて判明しつつある折線パターンの対称性と力学系の性質の関係は、今後所望の性質に合わせて折線パターンを設計する際の基礎原理となると考えられる。(3)は発展途上であるが、次年度以降、数理と物理を融合する上で重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
円筒折紙テセレーションにおける“うねり”と力学系の保存性に関する論文は、非線形科学の国際専門誌(CHAOS)に投稿し、掲載済である。スケール変換を含む自己相似な折線パターンに関する結果をまとめた論文は、令和6年度に開催される折紙の国際会議(8OSME)に投稿し、受理済・発表予定である。その他、論文化されていない成果(折紙・切紙のソリトン、折紙の大域的/局所的自由度の計算)を含めて、折紙の力学系モデルを応用数学・折紙科学/工学の国内外の学会で多数発表しており、学会賞を受賞するなど、分野内外から一定の理解・評価を得ることができた。また、Harvard Universityの研究グループとの共同を通じたtopological mechanics等の物理学の文脈との接続は当初の想定以上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、まずは学会発表済の成果(折紙・切紙におけるソリトン、大域的/局所的自由度の計算)を論文化し、投稿することを計画している。平行して、当初予定した通り、令和5年度に得られた数理に関する成果を受けて、幾何学/運動学に加えて物理学の知見を取り入れた物性の解析を行う予定である。例えば、折紙のバネマスモデルであるbar-and-hingeモデルを用いた固有振動モードの解析を行い、大域的自由度に関する知見との対応を観察することを考えており、すでに着手している。また、この際には、令和5年度に得られたtopological mechanicsに関する知見も取り入れる。
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