Project/Area Number |
23KJ0745
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 10040:Experimental psychology-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原島 小也可 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
|
Keywords | 共感覚 / 意味処理 / プライミング |
Outline of Research at the Start |
ものを見たり聞いたりした時に、通常喚起される感覚に加えて他の感覚も意識にのぼる現象を共感覚と呼ぶ。共感覚は人口の少数が保有する認知特性で、文字に色を感じる色字共感覚や音に色を感じる色聴共感覚など様々なタイプが存在する。近年、共感覚が、低次の知覚処理に加えて高次の概念処理と深く関連する可能性が報告されているが、これらの報告の多くは色字共感覚を対象としている。本研究では、これまで中心的に研究されてこなかった色聴共感覚において意味概念が果たす役割を実験的に検討することで、複数の共感覚タイプ間で一元的に論じられてきた共感覚のメカニズムを、特に意味メカニズムの側面から精緻化して説明することを目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
共感覚の生起には高次の概念処理が関与している可能性が議論されている。これは,事物の概念情報から関連する感覚情報が活性化される際に,共感覚者に特異的な励起感覚情報も活性化するという考え方である。このような背景を踏まえ,本研究課題は,共感覚において意味概念が果たす役割を実験的に明らかにすることを目的として遂行された。 研究1では,共感覚者において意味処理に特異性が確認されるか検討した。実験1では,共感覚者と非共感覚者を対象に,様々なオブジェクトの音に続けて画像を呈示し,音と画像の意味的一致性を判断する課題を行った。その結果,共感覚者では反応時間における一致効果が有意に減少し,項目間の関係性処理が弱化している可能性が示唆された。さらに,連想型に比べて投影型の方が一致効果が減弱している傾向も確認された。しかし,実験2として新たな参加者に追試を実施したところ,投影型の方が一致効果が小さくなる傾向は確認されたものの,共感覚者と非共感覚者で一致効果に有意差は確認されず,実験1の結果は部分的にしか再現されなかった。意味的一致性判断課題には,聴覚刺激による視覚的イメージの活性化のプロセスと,活性化された視覚的イメージと呈示された視覚画像の照合プロセスが含まれており,これらのプロセスと共感覚の感じ方が交絡したために実験間で一貫した結果が得られなかった可能性があった。 上記の前者のプロセスに限定して検討するため,研究2では,音を課題非関連刺激とする画像の意味カテゴリ判断課題(プライミング課題)を実施した(実験3)。また,SOAや音と画像の一致性の条件数を増やすことで,概念活性化の時間的タイミング,興奮性・抑制性の強さ,概念の拡散範囲の観点から厳密に検討しなおした。結果は分析中であるが,本課題により概念や感覚情報の活性化過程を群間で詳細に比較できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで,共感覚の現象学的な側面を明らかにする研究や,共感覚者の知覚処理や記憶処理に焦点を当てた研究は盛んになされてきた。しかし,共感覚者の意味処理に着目した研究は,共感覚における意味概念処理の重要性が主張され始めてまだ数年ほどしか経っていないこともあり,ほとんどなされてこなかった。今年度の研究は,意味的一致性判断課題やカテゴリ判断課題といった実験心理学的手法を用い,頑健な現象であるプライミング効果から共感覚者における意味処理の特異性を明らかにしようとするものであり,共感覚研究の新たな方向性を提案するものであると考えられる。 本年度の研究成果は,主に学会発表によって積極的に発信された。研究1の結果は日本基礎心理学会第42回大会でのポスター発表や「注意と認知」第22回研究会での口頭発表等で報告され,前者の学会では日本基礎心理学会優秀発表賞を受賞した。また,研究1の総合的な結果については,2024年5月に英国において共感覚の主要な研究者が集って開催される,The UK Synaesthesia Association and the American Synesthesia Association joint conferenceでの発表が採択されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究1で得られた結果が一貫しておらず,統一的な解釈を得るために,今後は前述の聴覚刺激による視覚的イメージの活性化のプロセスと,活性化された視覚的イメージと呈示された視覚画像の照合プロセスのそれぞれにおいて,共感覚者特有の結果が確認されるか検討する必要があると考えている(研究2, 研究3)。最終的な目標は,査読付き国際誌への投稿である。共感覚は,オブジェクトの多感覚的属性を長期間にわたってアモーダルな概念に統合していく一般的なクロスモーダル学習過程のモデルとして機能する可能性が議論されている。したがって,共感覚者におけるクロスモーダルな意味処理の特異性について検討することで,共感覚や人間一般のクロスモーダル学習の機序に関する議論を進展させうると考えられる。
|