Project/Area Number |
23KJ0817
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 良之介 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | ポーランド / 国境地域 / 地下出版 / 文化遺産保護 / ドイツ=ポーランド関係 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、1980-2000年代のポーランド、とりわけ旧ドイツ東部地域において行われた、ドイツとの歴史問題やローカルな多文化的過去に関する社会的議論をテーマとして扱う。第二次世界大戦後にポーランドに併合された同地域の文化生活において、ローカルな「非ポーランド的」過去、なかんづくドイツ文化の中心地としての過去をどう取り扱うかという問題は、一貫して重要な位置を占めてきた。本研究は、ポーランドの政治的・文化的生活が激動を経験した1980年代の展開にとりわけ焦点を当て、その後の同地域の文化的景観の「ヨーロッパ化」につながる転換期として、この時期に行われた議論の実像を明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の後半から、ヴロツワフ大学ドイツ・ヨーロッパ研究センターに滞在し、同大学図書館を中心にポーランド各地の図書館・文書館で調査を行った。 史資料の収集にあたっては、滞在地のヴロツワフ、および同地を中心とするドルヌィ・シロンスク県で、1980-1990年代に発行されていた文化雑誌や学術的刊行物に焦点を当てた。具体的には、同地域を代表する文化雑誌『オドラ』や、「連帯」期の非公式の文化生活の中核を担った『オベツノシチ』誌をはじめ、当該時期のパブリックな言論において、ドイツに関連するテーマがどのように論じられていたか、という点に着目した。 当該時期、とりわけ「連帯」期の出版物を扱った従来の研究では、一部のカトリック出版・亡命出版を除けば、首都ワルシャワで発行されていた出版物に関心が集中する傾向にあった。これを踏まえ、本研究では、ドルヌィ・シロンスク地域の発行物の分析を通じて、ドイツとの境界に位置する同地域のローカルな言論が、ナショナルな文化的中心であるワルシャワの知的変動のうごきとどのように連動していたかを捉えようとした。その際、先行研究に基づいた当初の予期として、戦後の国境移動・強制移住を身をもって経験した同地域における知的展開が、ナショナルな規模での変容をリードしていた側面のあったことが想定された。しかし現時点までの研究結果から、そうした動きは限定的な規模にとどまり、ワルシャワからの影響の側面がむしろ大きいこと、また「変容」の内実としても、実際には従来の機関(認可刊行物、大学、文化財保護スキーム等)を利用した漸進的側面も無視できないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画を1年早め、研究の初年度から研究対象地域に渡航し、日本でアクセスできない史資料を多数入手することができた。研究指導の点でも、受け入れ教員のクシシュトフ・ルフニェーヴィチ教授に加え、旧『オベツノスチ』誌メンバーとして活動した経験を持つマレク・ズィブラ教授からの惜しみない助言が研究の助けとなった。また、グダンスクやオルシュティンなど、他の旧ドイツ地域の研究者とも交流し、それぞれの地域の経験を踏まえた貴重なアドバイスを受けることができた。 他方、研究成果の公表という点では、予定していた論文投稿を行うことができず、在外研究中の立場を生かした海外学会への参加の機会も、2023年度中は得られなかった。現地指導教員の助言もあり、研究計画の変更・拡張を行ない、新たな調査を優先的に行なった結果、現時点での知見を論文の形にまとめることが難しくなったことが主な要因である。 以上から、研究成果の公表における遅れは否めないものの、次年度以降の研究のため豊富な材料を得ることができ、全体としておおむね順調に研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の前半は引き続きヴロツワフに滞在し、史資料の収集を進める。前年度の研究の成果を踏まえつつ、時期を進め2000年代の刊行物も参照し、80-90年代の文化的変動の中長期的影響を明らかにすることを目指す。在外研究終盤の6月末には、グダンスク大学の国際研究会で研究成果の報告を行う。 2024年の後半は、在外研究中に収集した史資料の分析を進め、成果を論文の形にまとめる。その際、年度前半の口頭報告の内容だけでなく、研究の別の論点も踏まえ、複数の論文を執筆・投稿し、最終的な成果物(博士論文)の基礎とする。
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