Project/Area Number |
23KJ1007
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 24010:Aerospace engineering-related
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
中澤 淳一郎 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 光イオン化 / 質量分析 / 真空実験 / レーザーアブレ―ジョン / 超高速衝突模擬 |
Outline of Research at the Start |
現在、宇宙科学研究所では、宇宙探査機が土星や木星の氷衛星等の天体を通過する際に衛星プリューム等の固体微粒子を捕集し、その場分析もしくはサンプルリターンをする「フライバイミッション」を、超小型宇宙機により行う探査システムが検討されている。その際には、宇宙機と探査対象天体の相対速度が 10 km/sを大きく超える場合があり、衝突電離物質のみを対象とした従来の質量分析計では、微粒子に含まれる分子が破砕され、構造情報の抽出は難しいとされていた。そこで本研究では、衝突により生じる固体やガスを包括的に捕集し、その場で分析することで、微粒子に含まれる有機物分子の情報を抽出可能な探査技術の研究開発を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、固体微粒子の超高速衝突により生成するプラズマ・ガス・固体破砕物を包括的に捕集する「超高速衝突生成物捕集機構」を確立し、微粒子が 20 km/s を超える超高速衝突をする場合での物質科学的情報の網羅的な抽出を目的とする。採用初年度は、特に超高速衝突により生成するガスの「その場質量分析」に注力している。 宇宙機に搭載された宇宙空間に漂うガスや大気のその場質量分析計では、主に電子イオン化法という、シンプルではあるものの、イオン化の際に比較的分子構造を破壊しやすい「ハードな」イオン化法を採用している。そこで申請者は、衝突後のガスをよりソフトな手法でイオン化することで、より分子の断片化を防いだ状態で質量分析ができると考えた。宇宙空間にてガスをソフトにイオン化しうる手法にはレーザーイオン化法や電界イオン化などが挙げられるが、実験への組み込みやすさや断片化の度合などを加味して、紫外光を照射する光イオン化法を採用している。光イオン化を用いる場合、分子の断片化はほとんど起こらないことが分かっている。 そのため、本年度は大阪大学レーザー科学研究所に、ガスの光イオン化が可能な実験系を新規に導入するための検討、計画の立案及び調整を行った。具体的には、真空チャンバー内に中性ガスを導入し、それに対して真空紫外光を照射することでイオン化し、電極により収束させ、電子増倍管で検出する実験系を構築した。また、より詳細に光イオン化について検討するため、同様の実験系を当研究室内にも立ち上げ中である。 一方で、大阪大学レーザー科学研究所にてレーザー照射によって超高速衝突を模擬する実験の準備として、レーザー照射強度と超高速衝突の速度の対応関係についてシミュレーションベースで検討する研究についても優良進行である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書執筆時点では、、固体微粒子の超高速衝突により生成するプラズマ・ガス・固体破砕物を包括的に捕集する「超高速衝突生成物捕集機構」の確立を目的としていた。しかしその後の詳細な検討により、特に超高速衝突により生成するガスのソフトイオン化、および「その場質量分析」に注目することで、背景課題である「微粒子が 20 km/s を超える超高速衝突をする場合にも、理学的な観点から重要な、高分子構造等の微粒子が持つ物質科学的情報を損なわない物質分析の開発」に対してよりクリティカルな研究提案ができると考えた。それに従い、本年度の研究計画は交付申請書時点から一部変更されている。 具体的には、「衝突によってガスをより低エネルギーの状態(経験する温度・圧力が小さい状態)で発生させ、そのガスを光イオン化というソフトな手法でイオン化し分析することで、フラグメンテーションを防いで物質情報を抽出できるその場質量分析計の開発」に取り組む。そのため、採用1年目には大阪大学レーザー科学研究所に、ガスの光イオン化が可能な実験系を新規に導入するための検討、計画の立案及び調整を行う。また、採用2年目には大阪大学レーザー科学研究所に導入したガスの光イオン化が可能な実験系に、さらにレーザーを照射して模擬衝突昇華ガスを生成する機構を追加する。この実験系を用いて、「衝突により生じたガス分子に含まれる有機物分子ならば、分解の度合いが小さい」という仮説を検証するデータを得たいと考えている。また、指導教員の共同研究者が在籍する、英国ケント大学の衝突実験設備を用いた超高速衝突実験も鋭意計画中である。採用三年目以降はそれらを踏まえて、これらの実験により得られたデータを中核とする博士論文を執筆する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、上述の新規の研究計画に基づき、大阪大学レーザー科学研究所、英国ケント大学のそれぞれで行う予定の実験系について、先行研究調査とシミュレーションベースの実験条件調整を行いつつ、先方の共同研究者との間で密なコミュニケーションをとり、より詳細な実験計画を立案していく。またその際、市販品の四重極型質量分析計などの実験装置を特別研究員研究奨励費も用いて購入する予定である。 また、予算管理の観点から、次々年度の科研費(基金分)を前倒し支払していただくことも検討している。これらの予算管理も踏まえ、指導教員ともよく相談しつつ研究計画を都度修正しつつ、研究を遂行していく方針を堅持したい。これにより、背景課題である「微粒子が 20 km/s を超える超高速衝突をする場合にも、理学的な観点から重要な、高分子構造等の微粒子が持つ物質科学的情報を損なわない物質分析の開発」に邁進する。
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