Project/Area Number |
23KJ1730
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 佑 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2025: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 権力分立制 / 枢密院 / 大日本帝国憲法 / 明治立憲制 / 宮中 / 日本近代史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、明治立憲制における天皇の最高諮問機関である枢密院を分析の中心として、「権力分立」の展開という視点から明治立憲制の運用を検討し、近代日本特有の「権力分立」制の実態を解明することを目的とする。その際、従来議会政治史を通して研究が蓄積されてきた行政―立法間のみならず、行政-司法間および宮中-府中間において生じた、各部門間の権限をめぐる葛藤の事例をも俎上に載せる。 具体的には、①条約改正問題や日清戦争下における枢密院の審議と議会制の関係、②官吏懲戒制度などにみられる、枢密院がもつ行政―司法間の権限調整機能、③枢密院による、政府―議会/貴衆両院間/宮中―府中間に生起した権限対立の調停を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、関東地方への史料調査や論文の投稿、学会報告を行った。 史料調査においては、国立国会図書館憲政資料室や国立公文書館、宮内庁書陵部宮内公文書館などで調査した。その結果、議会開設の直前に、枢密院の独立性をめぐる争点が存在していたことを示す史料を宮内公文書館所蔵の「内大臣府文書」の中に見出すなど、議会開設後の枢密院の運用を説明する基礎的な枠組みが構想できた。その成果を踏まえ、現在1本の論文を投稿中である。また、イギリスの外交記録F.O.46やF.O.410の複製版(横浜開港資料館所蔵、イギリス国立公文書館原蔵)を収集したことが特筆される。イギリス側の外交文書の読解を通して、第二次伊藤内閣における条約改正交渉の開始に際して、改正案への枢密院の支持が日本の立場を補強していたことが裏付けられた。 学会発表は3本行った。九州史学研究会大会では、日清戦争期における枢密院の動向を主軸として当該期の権力分立制の動態について分析した学会報告を行った。その結果、当該期の枢密院は緊急勅令の審議権を定着させていった一方で、国際約束の審議権が制限されたことを指摘した。さらに、捕獲審検所の設置過程を通して、枢密院が行政・司法間の権衡を保つ役割を付与された画期を見出した。この成果を基礎とした論文を執筆中である。九州史学研究会近現代史部会では、枢密顧問官の人事について創設から廃止までの全期間を検討した成果を報告し、本研究課題で取り上げる期間の枢密院の性格について、昭和期までを見通しつつ評価する視座を得た。九州大学人社系副専攻プログラム研究ポスター報告会では、憲法起草者の権力分立観と枢密院創設の関係及び、行政官懲戒制度における枢密院の位置付けについて報告を行い、明治立憲制においても国家権力間の「協働」が要請される制度が存在し、枢密院は統治機構内の中立者としての役割も有していたとの理解を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、宮内省と内閣との対立を含めた、各機関の間での対立への調停における枢密院の役割を研究する計画であったが、宮内公文書館所蔵史料などの宮内省関係の史料の収集が遅れているため、研究成果を発表するまでに至らなかった。 また、行政部と司法部の間の権限調整問題に関する研究も計画しており、採用前の学会報告の成果も踏まえて論文の執筆を進めていたが、新たに「高橋健三関係文書」(小田原市立図書館所蔵)を調査した結果、再編の必要が生じた。そのため論文の投稿は次年度に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の3つのテーマを重点的に推進する。 ①今年度に学会報告を行った日清戦争期の枢密院に関する研究 ②行政官の懲戒制度の形成過程を通じた、行政部と司法部の間の権限調整問題に関する検討 ③条約改正問題を題材とした、明治立憲制における権力分立制と対外政策との関係 ①については史料の収集は完了しており、早期に投稿する。②については、日本大学図書館所蔵の「松岡康毅資料」の調査結果を増補して論文を執筆する。③については、英国国立公文書館で1890年代の日本とイギリスとの条約改正交渉に関する史料を調査する。 国内での史料調査では、宮内公文書館や他大学の図書館に所蔵された史料を調査する時間を確保するため、国立国会図書館に所蔵された史料の収集は、遠隔複写サービスを積極的に活用する。
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