Project/Area Number |
23KJ1928
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 49010:Pathological biochemistry-related
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
陣内 ひろみ 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 脂肪酸輸送体 / 精子形成 / 不妊 / 脂質解析 |
Outline of Research at the Start |
FATP(Fatty acid transport protein)1は脂肪酸に補酵素A(CoA)を付加する酵素であり、脂肪酸の細胞内取り込みに寄与する。骨格筋・心臓・脂肪組織以外でのFATP1の発現や機能については全く不明であることから、我々はFATP1欠損マウスを作製して生体内での役割を明らかにすることにした。FATP1欠損雄マウスは交配で産仔が得られず、 精子の形態異常と運動率の低下を呈した。このことは、FATP1が精子の形成や機能に重要な役割を果たしていることを示している。本研究では、雄の妊孕性に関わるFATP1発現細胞をつきとめ、その細胞におけるFATP1の役割を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
雄の生殖能におけるFATP1の役割を明らかにする目的で、FATP1欠損雄マウスを野性型雌マウスと自然交配させた。その結果、FATP1欠損の雄マウスと同居飼育した雌マウスでは、膣栓はつくものの一度も出産に至らなかった。膣栓を確認できた雌マウスの子宮内の精子数は、FATP1欠損で野性型の1/3程度であり、子宮卵管接合部を超えて卵管に到達した精子数はFATP1欠損により1/10程度まで低下した。そこで精子運動解析装置を用いて定量評価を行った。FATP1欠損マウスは97%以上の精子が動いておらず、精子の運動能が著しく低いことが明らかとなった。また、体外受精実験では、野性型精子を用いた場合、受精率は50%以上であったのに対し、FATP1欠損精子は透明体をほぼ通過できず、受精率は1%未満であった。以上のことから、FATP1欠損精子は雌の生体内で卵管までの移動が困難であり、仮に卵子まで到達しても受精させる能力が著しく低いことが明らかとなった。 次に精巣のPAS染色による生殖細胞分化の評価では、FATP1欠損により分化した精子の精細管内腔への放出の遅延が確認された。FATP1は脂質代謝酵素であるため、精巣と精巣上体尾部を用いてリピドミクス解析をおこなった。その結果FATP1の欠損は、中性脂質や膜リン脂質の組成にほとんど影響を与えなかったが、精巣上体尾部の精子でアシルカルニチンが蓄積しており、ミトコンドリアの機能異常が示唆された。そこで電子顕微鏡を用いて精子の形態を解析したところ、FATP1欠損精子のミトコンドリアは、大きさが不揃いで、空泡化も認められた。また蛍光試薬を用いて精子のミトコンドリアの膜電位を調べたところ、FATP1欠損精子では著しく低下していた。以上のことから、FATP1欠損マウスの精子では、ミトコンドリア機能の低下が生じ、運動能の低下や受精能の低下に繋がっていると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FATP1欠損マウスにおける生殖能の定量解析において自然交配やIVFでは受精が成立せず、精子の形態異常、移動能の低下、運動能の低下が明らかになった。 次に脂質解析を行ったところアシルカルニチンの蓄積を引き起こしていた。電子顕微鏡を用いた精子の形態解析においてはミトコンドリアの形態異常、ミトコンドリア膜電位検出蛍光試薬を用いた解析においては膜電位の低下が明らかとなった。 また精巣組織の染色から精子の精細管内腔への放出に遅延があることが明らかになった。 以上のことから、実験全体としては概ね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、FATP1欠損精子でミトコンドリアの形態異常や膜電位の低下を見出していることから、FATP1欠損マウスを細胞内ATP可視化マウスと交配することで、生体内のATP量測定系を構築し、生殖細胞およびホルモン産生細胞でのATP量を検証する。 さらに、フラックスアナライザーでミトコンドリアの好気呼吸状態を評価し、FATP1欠損がβ酸化によるATP産生を低下させて細胞の機能不全を生じさせるかを検証する。 次にマウスの血中ホルモン類(テストステロン・LH・FSH・ACTH)の測定を行い、ホルモン産生細胞におけるFATP1の役割を検証する。 FATP1は生殖細胞以外にライディッヒ細胞、セルトリ細胞に発現している。そこで、精子形態や機能異常を来している原因となる細胞を突き止める目的で、FATP1のfloxマウスの作出を行う。作出したFATP1のfloxマウスを、細胞特異的Creマウスと交配し、細胞特異的FATP1欠損マウスの作出・解析を進める。 さらに、ウサギ抗マウスFATP1抗体を作製し発現細胞を特定する。生殖細胞については、マウス精巣から各分化ステージの細胞を分取して、FATP1タンパク質の発現量が生殖細胞の分化の過程でどのように変化しているかを明らかにする。
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