Project/Area Number |
23KJ1934
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 26010:Metallic material properties-related
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
齋藤 圭 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 水素脆化 / 硬化 / 転位すべり / 転位密度 / 空孔蓄積 / 損傷 |
Outline of Research at the Start |
本研究では水素脆化特性の異なる金属材料(純鉄:bcc金属、純ニッケルとオーステナイト系ステンレス鋼:fcc金属)を対象に種々の測定技術を組み合わせる事で素脆化素過程に関与する水素と格子欠陥(転位と空孔型欠陥)とのマイクロスケール以下での相互作用(局在化や濃化の促進)、およびそれに伴う材料損傷とを定量的に関連付ける事を目的とする。そして、本研究の成果として水素脆化現象のさらなる理解に加えて実環境では数十年単位で起きうる材料劣化の予測技術確立に向けた基盤構築に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
水素脆化特性が異なる3種類の金属材料(純鉄、純ニッケル、ステンレス鋼)を対象に、種々の手法を用いて局所領域における転位組織、空孔蓄積、そして水素存在状態の変化の定量化と三者の相互作用の解明を進めており、以下について明らかにした。 3種金属に対して水素を含んで引張試験すると水素未添加材に対して伸びが低下する脆化現象と同一ひずみにて応力が増加する硬化現象が見られた。また、TEM観察とX線回折解析から20%ひずみを付与した純鉄と純ニッケルの転位密度は水素有無に依らず同程度であった。さらに、bcc金属のマルテンサイト鋼に対して水素を含んで応力緩和試験すると転位すべりの活性化体積(=すべり障壁)が増加し、水素は転位すべりの抵抗として作用することを明らかにした。従来欧米を中心に提唱されてきた水素による転位増殖とそれによる軟化理論とは異なり、水素は転位すべりに抵抗として作用し、転位密度の増減には影響しないことを見出した。 空孔蓄積と水素存在状態の変化を調べるため、純鉄と純ニッケルに対して水素を含んで20%ひずみを付与した後、低温昇温脱離分析法にて水素放出挙動を測定した。純鉄では約30℃の転位と約70℃の空孔にトラップされた水素放出を検出した。一方、純ニッケルでは体拡散に対応する約110℃の水素放出に加え、-50℃からの水素放出を新たに検出した。これは従来の室温実験では検出困難であった空孔や粒界に関連した水素と予想しており、今後詳細を調査する。また、水素とひずみにより形成した空孔が損傷として作用するかを明らかにするため、空孔形成させたマルテンサイト鋼に対して引張試験を行った。水素を含まずに同じひずみ履歴を与えた場合と比較して空孔を含むと一様伸びが低下し、150℃の時効処理にて空孔を消滅させると伸びが回復した。つまり、蓄積した空孔が損傷として作用することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素脆化特性が異なる3種類の金属材料(純鉄、純ニッケル、ステンレス鋼)を対象に、ステップ①(種々の手法を用いて局所領域における(項目1)転位組織の変化(項目2)空孔蓄積の変化、そして(項目3)水素存在状態の変化を測定し、三者の相互作用を解明)、およびステップ②(水素起因損傷発達の定量化し、蓄積した転位や空孔の密度、そして水素量と傷発達度合いを関連付ける)を進めており、2023年度の計画進捗状況を以下に示す。 ステップ①に関して、3金属種にて水素脆化が生じる水素添加条件の確定、水素を含むと3金属種全てに共通して硬化現象を示すこと、そして純鉄と純ニッケルについては以下の項目1~3を明らかにでき、予定通り研究が進展した。 項目1に関して、電子チャネリングコントラストイメージ(ECCI)観察にて転位密度測定を行う計画であったが、保有する走査型電子顕微鏡の空間分解能では測定困難であることが分かったため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察とX線回折(XRD)解析に変更した。 (項目1)転位組織の変化:TEM観察から純鉄、純ニッケルともに水素有無に依らず同一ひずみ付与時の転位密度に変化が見られなかった。また、水素を含んで塑性ひずみを付与すると、XRD解析かららせん転位成分が増加している事、そしてECCI観察すると局所的に転位セルサイズが減少していることが新たに分かった。今後、水素による硬化現象に伴う転位組織の変化機構を今後明らかにする。 (項目2)空孔蓄積の変化:低温昇温脱離分析(L-TDS)を用いて純鉄の空孔に対応する水素放出を検出したことに加えて、純ニッケルに関しても水素を含んでひずみ付与する事で形成する空孔と想定される水素放出を捉えることに成功した。 (項目3)水素存在状の変化:純鉄、および純ニッケルともにL-TDSにて水素放出を格子拡散や各種トラップサイト別に分離できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ステップ①に関して、純鉄と純ニッケルについては20%ひずみ以外の複数のひずみ水準で2023年度に得られた傾向と同じかを調査する。また、ステンレス鋼についても同様のひずみ水準での項目1~3を調査し、材料に依らない水素の金属材料に及ぼす作用を明らかにする予定である。その際、ステンレス鋼への水素予添加に600 h要するため、2024年度も水素添加装置を増やして効率的に実験を進める予定である。 ステップ②に関して、純ニッケルに水素を含んで20%ひずみを付与すると、水素を含まない場合と比べて電位線後方散乱(EBSD)解析で得られるミクロスケールでの方位差が増加し、塑性の関与した損傷を定量化できる可能性があることが分かった。申請当初、画像相関法(DIC)を用いて局所塑性ひずみを損傷の指標に用いることを検討したが、水素添加しながらの測定が困難であることが分かったため、水素を含んで塑性ひずみを付与した後のEBSD解析で得られるミクロスケールでの結晶方位差情報を基に損傷の定量化を進めていくことに変更する。
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