Project/Area Number |
23KJ2091
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上村 知春 立命館大学, BKC社系研究機構, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | エチオピア / アムハラ / エチオピア正教会 / キリスト教 / 食と宗教 / 食文化 / 信仰 / 生活 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、エチオピア正教会信徒の日常的な実践を重視して食の役割を検討することをつうじて、人間の根源的な営みである食と信仰の関連を明らかにすることである。これまで先行研究が焦点を当ててきた、信徒が食をめぐる規範にいかに対応するのかという視点に加え、信徒がいかなる知恵や技術、価値観にもとづいて日常の食の営みに携わり、それが個人と集団を包摂する教会コミュニティにいかなる影響を及ぼすのかを、食事のつくり手の実践を重視して明らかにする。本研究は、従来別個に扱われてきた宗教的な領域と日常的な領域を架橋する新しい「食と宗教」研究の試みである。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、エチオピアで2回の現地調査を実施し、エチオピア正教会の信徒にとってとくに重要な「断食」(ts’om)をそれぞれ参与観察した。 7月から8月にかけてのフィールドワークでは、とくに厳しい断食のひとつとされる15日間の聖母被昇天断食を、エチオピア北部・ゴッジャム地方の農村で参与観察した。ゴッジャム地方は、エチオピアのなかでも敬虔な信徒が多いとされる地域である。農耕を生業とする調査対象者は聖母被昇天の断食中、毎日午後3時すぎまで飲食物を慎み、かつ、一切の動物性の食品の摂取を断っていた。この調査では、個人および家庭での徹底した飲食のコントロールと、毎日の教会通い、教会における集団的な聖パンの摂取のサイクルをつうじて、厳しい断食にふさわしい聖なる時空がコミュニティ内でいかに形成されているかが明らかになった。 3月から4月にかけてのフィールドワークでは、地域の情勢にかんがみて当初の計画を一部変更し、首都アジスアベバにて1カ月弱の調査を実施した。調査対象の選定作業とあわせて、55日間の四旬節の一部を参与観察した。四旬節は、期間の長さと厳しさの程度のいずれの側面においても、すべてのエチオピア正教徒がもっとも重要であると認識する断食である。地元教会の聖職者および教会のミサに参加する信徒を対象に、この断食期間中の食実践の内容と断食の意義に関するインタビューを実施した。あわせて、人びとが家庭内で「食べる」、あるいは「食べない」活動をいかに行っているのかを、家庭訪問をつうじて参与観察した。家庭での食事づくりに従事する都市部の女性たちは、長期の断食独自の料理の種類を複数知っており、その情報を近隣の女性同士で共有していた。食べない慎みの態度に加えて、当該断食にちなむ料理をつくり、提供し、ともに食べることをとおして信仰を具現化していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、2回のエチオピアでのフィールドワークを通じて、本研究課題を達成するために必要な調査の基盤をおおむねかためることができた。調査地域の情勢を理由にフィールドワークの計画を一部変更する必要があり、当初は計画していなかった首都で調査をすることになったが、そのことによって、都市部の教会コミュニティにおける聖人崇敬のあり方と食実践に関する新たな知見を得ることができた。 また、博士後期過程までに実施してきた食研究を、本研究の問いにもとづいて検討し直し発展させ、その成果を学術誌(下記【雑誌論文1】)に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
食事の担い手による、教会コミュニティの宗教生活への貢献のあり方を詳細に検討していく。そのために現地での参与観察を継続し、あわせて綿密な文献調査を実施する。とくに非カルケドン派キリスト教徒の聖人・聖霊崇敬に関する文献を渉猟し、崇敬心にもとづいた信徒の日々の調理・提供活動と信仰生活の生成過程の連関について考察を深める。学会・研究会での報告及び執筆活動に取り組み、年度中に学術誌へ投稿する。
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