Project/Area Number |
24520372
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Research Field |
European literature (English literature excluded)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
平野 隆文 立教大学, 文学部, 教授 (00286220)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2015: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2014: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2013: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2012: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | フランス / ルネサンス文学 / 異文化接触 / 旅行記 / 人類学 / 西洋中世近代史 / 西洋ルネサンス文学史 / ルネサンス期旅行記 |
Research Abstract |
本年度は、テヴェ、ド・レリーに加えて、ブリー、サントンジュ、ショーヴトンらの旅行記を収集し、その分析に当たると同時に、それらがルネサンス後期文学に与えた影響についても検証を行った。また、多様な異文化事象との「対決」が、自文化を徹底的に相対化する言語を錬磨する結果となる点は、研究計画にも述べた通りだが、このように世界をその多様性の受託という観点から自作品に引き込んだ、モンテーニュの『エセー』の新たな読解にも多くの時間を割いた。16世紀後半という内戦時に於ける硬直化した「イマジネール」(新旧両教徒に共通する)を、モンテーニュが相対化する手法を、主として言語学的観点から解きほぐそうとした、彼の変幻自在な思考の過程を追っていった。モンテーニュが、多面的価値と共鳴し振動するしなやかな宇宙を、懐疑論と巧みに交差させつつ表象する試みにメスを入れることができたとも換言できよう。特に、「旅行記」という他者との究極的な出会いを、関連文献を渉猟しつつ読解することは、本研究に於ける、最も中核的な部分を占めるものであり、この点での収穫は非常に大きかった。また、ラブレーなどの前期の作家たちの「怪物的な創造力」が、後期のプロテスタントの作家や詩人たちの文学的展開に、複雑な配線で繋がり、新たな文学的結晶へと達した点をも、かなり明らかにできた。この点は、16世紀の前期と後期の文学やパンフレ作品が、「異界」との接触を経た新たな文学創造へと向かっている事実と密接に繋がっており、今後も本研究の核を成すことになるに違いない。なお、以上の成果の一部は、共著で参加した『知のミクロコスモス ― 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』(中央公論新社)に発表した論考に反映されている(研究発表欄を参照のこと)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラブレー、ロンサール、モンテーニュ、ドービニエ、テオドール・ド・ベーズ、カルヴァン、ヴェルステガン、クレスパン、ショーヴトン、デ・ペリエ、パリシー、(アンリII) ・エチエンヌ等々、大作家から比較的著名な作家や詩人、旅行記やパンフレの執筆者たちに関しては、一時的文献の収集も順調に進み、また、「異界の創造」や「他者性の言語」という観点からも、重要な箇所を資料体として整理し、可能な限り精緻な分析を施し、特に重要な箇所は、今後の成果発表のために翻訳をも済ませ(特に、ロンサール、ドービニエ、ベーズ、ヴェルステガン、デ・ペリエ、パリシーなど)、ルネサンス文学が異文化接触により、世界の異質性を取り込み、それ以前の文献と比較した場合、文学作品の高次な異質性にまで変容する役割を果たした点を、徐々に明らかにできつつある。この点は順調に進展していると言える。ただ、一時的な病(入院)が障害となったため、夏休みなどを利用したパリ国立図書館などでの、一次資料の収集に、僅かながらの停滞が見られたのは認めざるを得ないが、その作業は、平成26年度に集中的に実現する。 特に、ラブレーの「高エネルギー」に満たされた創作において、外部的諸価値との接触が、混淆的な諸価値をテクスト内部に再創造する側面、およびその異界的世界の創出が、古典的文学の平板化圧力により、徐々に張力を喪失していく様子、さらには、ラブレー的な、「宇宙的スカトロジー」が、16世紀後半のド・ベーズを始めとするプロテスタント作家たちにより、自己正当化の「文字装置」ないしは文学的「火砲」へと流入し、新たな向心力を獲得している点については、文章を発表し、世の中に公表することができた。この点も研究の進展に前向きに作用している。
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Strategy for Future Research Activity |
悲劇的・驚異的物語群(J.-P. カミュ、ベルフォレ、ボエスチオー)、あるいはボッカチオからマルグリット・ド・ナヴァールに連なる物語群に関する文献収集と、それを下敷きにした分析に、さらなる拍車をかけたい。その嚆矢として、言わば斜角からのアプローチにはなるが、ボエスチオーの『驚異的物語』や、アンブロワーズ・パレの『怪物と驚異』などはほぼ読了し、その分析に着手しつつある。怪物の概念は、天界(神)の警告であると見なされてきたが、本研究ではむしろ別の側面に注目し、調和を保つべき自然に闖入した「異質」が、多様なる自然界に占めた特権的な位置の表象という観点から、既存の研究とは異なる視点を提供していきたい。また、悲劇的物語群に見られる、一見ミメーシス的なイマジネールが、実は、怪物的虚構を「現実」として物語る文学的倒置法であった、という視点からの考察も進めていきたい。そうした主要な作品を囲む、様々なパンフレや副次的作品に関しては、まだ掘り尽くされていない文献が数多く存在するので、平成26年度を含め、以後、フランスでの資料収集を中心に、ルネサンス期の文学的異界の創造力に、一次資料から迫る努力を続けたい。 また、ミレイユ・ユション、ジャン・セアール、フランク・レストランガン、ベネディクト・ブードゥー、イザベル・パンタン、エマニュエル・ナヤなど本国の一流の研究者との接触を通しても、新たな知見を獲得したいと考えている。そのためには、学会や所属大学(立教大学)で平成26年度に予定されている国際学会への積極的な招聘や参加にも力を注ぎたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、夏期休暇中を利用して、資料収集のために10日間ほどパリ国立図書館(B.N.) およびパリ国立古文書館への海外出張を予定していた。またその際に一次資料をマイクロフィッシュなどの形で購入し、その整理を謝金などでアルバイトに依頼する予定でいた。しかし残念ながら病気が原因で、この期間に入院と療養を余儀なくされたために、出張を果たせず、主として旅費と謝金が使いきれなかった。以上が理由である。 平成26年度に夏期休暇を利用し、できれば15日前後の海外出張を改めて実現させ、パリ国立図書館(B.N.) およびパリ国立古文書館などの施設で、重要な一次文献を収集すると同時に、帰国後におけるそれらの印刷、製本、整理などのため、大学院生などにアルバイトを依頼し、資料を今まで以上に整えたい。そのために、「次年度(平成26年度)使用額」を利用する予定でいる。
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