Research Abstract |
本研究は,精神疾患における薬物治療へ薬剤師が介入することで,非定型抗精神病薬服用患者の耐糖能フォローアップ状況がどの程度改善されたのかを検証することを目的とした。昨年度までに,当院精神科神経科を受診し,非定型抗精神病薬を連続して処方されていた患者の約60%で,1年間に1度も血糖値やHbAlc値を測定されていないことを明らかにした。しかし,医師に対して意識調査を行ったところ,70%以上が血糖値やHbAlc値を1年間に1回以上モニタリングしていると回答しており,実態調査との乖離が浮き彫りとなった。 精神科神経科病棟に専任の薬剤師を配置した後,血糖値やHbA1c値を測定されていない患者は約40%に減少した。特に入院患者において,血糖値を測定されていない患者は26.6%から2.7%に減少し,HbA1c値を測定されていない患者は435%から8.2%に減少した。 また,血糖値を測定されていた患者のうち,随時血糖値が200mg/dl以上を示した患者は10.6%から7.6%に減少した。HbA1c値を測定されていた患者のうち,HbA1c値(NGSP値)が65%以上を示した患者は11.2%から6.0%に減少した。 しかし,外来患者に関しては,入院患者に匹敵するほどの大幅な耐糖能フォローアップ状況の改善は認められなかった。これは外来診療における医師の業務が多忙であり一人の患者に割ける診察時間が少ないことや,検査等に対する精神科患者の理解が得られにくいこと,外来患者の耐糖能を,薬剤師を含めたメディカルスタッフが十分に確認できていないことなどが原因として挙げられる。今後は,メディカルスタッフ同士の連携システムの構築や,電子カルテシステムの改善などを検討すべきと考える。 これらのことから,精神科神経科病棟への専任薬剤師の配置は,非定型抗精神病薬服用患者の耐糖能フォローアップを行う上で有意義であった。この結果は精神科病棟における薬剤師の病棟薬剤業務の必要性に寄与する重要な知見と考えられる。
|