| Project/Area Number |
24K03799
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| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Section | 一般 |
| Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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| Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西尾 宇広 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (70781962)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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| Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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| Keywords | 文芸的公共圏 / ハインリヒ・フォン・クライスト / 家庭雑誌 / カール・グツコー / フェミニズム / 文化史 / 18世紀 / 19世紀 / リアリズム / 感情移入 / ドイツ文学 / マスメディア |
| Outline of Research at the Start |
本研究では、ハーバーマスが提起した「文芸的公共圏」概念の理論的射程を、近代ドイツ語圏文学の具体的事例に即して再検証する。公共圏に参加する市民としての主体性を涵養するための触媒として、ハーバーマスが18世紀の啓蒙期の言説から析出したフィクションへの感情移入という文学的契機は、19世紀の主要な文芸潮流であるリアリズムへと引き継がれ、さらにその契機が持つ可能性は、当時の巨大な出版市場を介したマスメディア的コミュニケーションの中で増幅される。虚構の言説が持つリアリティへの批判的・戦略的な関心の増大と、公共圏の歴史的発展の相関性を精査することで、「政治的公共圏」の前提をなす文化的諸条件の解明をめざす。
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| Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究実施計画を一部変更し、1800年前後の文芸的・政治的公共圏に関する著作の編集・刊行に従事するとともに、本研究課題の主要な対象である19世紀の「マスメディア」についての研究調査と成果発表をおこなった。 前者については、18世紀末から19世紀初頭にかけて活動したプロイセン人作家H・v・クライストの仕事の総体を、同時代の公共圏との関連から抜本的に再解釈し、その研究成果を単著の形にまとめて出版した。生前には文壇からほとんど評価されなかったクライストは、一般に公共圏との関係が希薄な作家とみなされているが、そうした先行研究の常識的前提に対し、クライスト文学が実際には同時代の公共圏をめぐる制度や主題(演劇、世論、革命、ジャーナリズムなど)とのさまざまな対決を軸に構想されていることを論証した同書には、第一に、クライスト研究への多大な貢献が認められる。さらに同作家の活動は、まさしく本研究課題が対象とする啓蒙期以降の文芸的公共圏の変容を示唆する最初期の事例でもあり、同書によって19世紀の公共圏について考察するための基盤的な見通しが得られたことは、本研究課題の遂行にとっても重要な意味を持つ。 後者については、19世紀のドイツ語文壇を代表する作家K・グツコーが刊行した雑誌『家のかまどの団欒』誌(1852-64)に関する論文を執筆し、その成果を含む論文集を共編著の形で出版した。同誌は19世紀の「マスメディア」として知られる「家庭雑誌」という一大ジャンルの原型をなす事例であり、同論文は、表面的には没政治的な内容の記事で構成されたその誌面の下層に、同時代に生まれつつあった新たな女性解放運動の水脈に連なる傾向が潜在していたことを指摘することで、一般に保守的なジャンルと目される家庭雑誌の解放的な可能性に光を当て、それによって19世紀の文芸的公共圏を評価するための重要な観点の一つを提示している。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」に記した通り、一部当初の研究実施計画からの変更もあったが、それによって18世紀から19世紀にかけての世紀転換期における「文芸的公共圏」の変容の諸相を総括する著作を刊行できたことは、本研究課題の遂行にとっても大きな意義があったといえる。加えて、当初予定していた19世紀の「マスメディア」に関する研究調査についても、これを一定の成果発表に結実させることができた。以上の点に鑑みて、本研究課題は全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、本年度に十分に取り組むことのできなかった作業を進展させる。具体的には、(1)ヘーゲル以後のドイツ美学を牽引した美学者F・Th・フィッシャーの主著『美学または美しさの科学』(1846-57)を中心に、19世紀の美学および詩学の議論における「感情移入」という契機の理論的位置づけに関する研究調査を進めるとともに、(2)「世論」という公共圏のトポスを主題化したK・グツコーの戯曲『リチャード・サヴェッジ』(1839)と『ウリエル・アコスタ』(1846)に関する分析および先行研究の精査をおこなうことで、両研究成果を学術論文として発表するための準備を整える。 さらに、本年度の研究業績である「家庭雑誌」に関連して得られた新たな論点として、(3)19世紀の文芸的公共圏を規定している重要な前提条件であるジェンダー的特性に着目し、とりわけ18世紀以降の市民的公共圏の内実を「友情」という観点から再評価する研究も進め、その成果を学会発表の形で公表する。
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