| Project/Area Number |
24KJ1038
|
| Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Section | 国内 |
| Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
|
| Research Institution | Institute of Science Tokyo |
Principal Investigator |
繁田 歩 東京科学大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(PD)
|
| Project Period (FY) |
2024-04-23 – 2027-03-31
|
| Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
| Budget Amount *help |
¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
|
| Keywords | イマヌエル・カント / 認識論 / 視覚障害 / 当事者研究 / 対話 / 認識的不正義 |
| Outline of Research at the Start |
本研究はイマヌエル・カントの普遍性に重点をおいた認識の理論と、障害をもつ主体に顕著となるような認識主体の相対性・多様性との両方に接続した認識論を提示することを目標としている。本研究は、したがって、研究内容として①カント研究、②現代認識論研究、②障害者へのケーススタディという三つの要素を研究の柱としている。特に、③の観点については、伊藤亜紗教授の監督のもと本研究課題において新たに展開される独創的な論点である。現代認識論についての言及は、近年ますます注目を集めている「認識的不正義」という社会認識論的な概念を障害というテーマ性に反映することが重要な課題である。
|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は以下の三つである。1、カント認識論における視覚障害者の取り扱いについての考察、2、視覚障害をもつ当事者との対話を通じた事例研究、3、認識的不正義をめぐる倫理的課題への言及。2024年度の研究実績としては、これら三つの項目の全てについて、予定以上に順調に進行したと評価することができる。 第一に、カント哲学における盲人の取り扱いについては、『人間学』を中心とした考察が進み、その成果については、第14回国際カント会議の一般研究発表の部にて、英語にて学会発表をすることができた。国際カント会議は4年に一度のペースで開催される、国際的なカント研究者の会合であり、昨年2024年はカント生誕300年周年ということもあり、極めて盛況であった。研究発表を通じて、世界中の研究者と交流を深めることでき、人脈の形成のうえでも重要な機会であった。 第二に、視覚障害をもつ当事者との対話を通じた研究を深めるという目標についていえば、伊藤亜紗教授(東京科学大学)の計らいで、視覚障害の当事者と対話する複数の機会を得た。例えば、視覚障害のある芸術家の作品展において、触覚による芸術鑑賞についての見識を深めたり、視覚障害の方々の暮らしぶりを収めた写真展では、視覚障害の当事者と会場をめぐる、ソーシャルビューイングを経験したりすることができた。他にも、現在は、当事者と哲学の図書を読む読書会を開催しており、そのような機会を通じて、現在まで当事者との対話を継続できている。 第三に、2024年度は、認識的不正義の中心的論者である、ミランダ・フリッカー氏が来日講演をしたこともあり、一連の研究会のひとつにおいて、報告者も研究発表をすることができた。フリッカー氏と直接に本研究の問題意識について意見交換をすることができたことは非常に貴重な機会であり、その他の世界中の研究者との交流が深まったことも特筆すべき成果である。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は2024年度から2026年度までの3カ年計画であるが、2024年度の進捗は計画以上に進展したと自己評価している。その理由は以下の3点である。 第一に、当初の計画では、2024年はイマヌエル・カントの著作に視野を限定して、視覚障害者の取り扱いについて再検討する予定であった。しかし、実際には、カントに限らず、デカルトの『屈折光学』から、ロック、ライプニッツ、ヴォルテール、コンディヤック、ディドロ、ビュフォン、ルソー、ヘルダー、テーテンスまでの感覚論の系譜を、網羅的に検討することができた。このように、近代における視覚論を網羅的に検討できたことは、当初の予定以上の成果であり、この点で計画以上に進展したと評価できる。 第二に、当初は、視覚障害の当事者にアンケート調査などで量的調査を行うことを計画していた。しかし、実際には、伊藤亜紗教授の指導のもと、障害者を研究対象とせずに、「生き生きとした主体」として対話する手法を学ぶことができた。その成果として、当事者の側から読書会実施の提案を受けることができ、対話的な相互交流において質的な調査を深めることが可能となった。さらに2024年には、熊谷と綾屋が提唱した「当事者研究」や、星加らの「障害の社会モデル」への批判などを学ぶことで、障害学についての考察を深めることができた。この点も、当初の研究計画では見えていなかった進展であり、評価に値する。 第三に、本研究では2025年度から2026年度にかけて、認識的不正義研究の第一人者であるミランダ・フリッカー氏が属するニューヨーク大学に渡航する計画であった。しかし、2024年にフリッカー氏は来日講演を行っており、その一連の研究発表会の中で研究発表をすることができた。このようにして、予定していたよりも早い段階でフリッカー氏と研究交流ができたことは計画以上の成果であるといえる。
|
| Strategy for Future Research Activity |
本研究は2024年度において、予定以上の進展を遂げることができた。しかし、残された課題として3点があり、今後の研究推進においては、これらの点を解決していきたい。 第一に、2024年度は、投稿していた論文が再査読の上で掲載不可となったため、出版物としての成果が少なくなってしまった。この点を踏まえて、次年度以降の研究では、資料収集や考察のフェーズから、論文を執筆するフェーズに移行して、研究成果を固めていきたい。 第二に、歴史的な研究と認識論的不正義の研究の接合については、依然として課題が多く、この点について議論を深めていく必要性がある。とくに、2024年度の研究を通じて、視覚障害者の取り扱いについて問題提起を行う適切な視点が、正義という観点か、それともケアという観点かについて一定の留保が必要になることが明らかになった。このような点についても理解を深める、認識論的不正義にまつわる議論を適切に反映した研究を展開することが今後の方策である。 第三に、当事者との対話についてであるが、本研究では質的調査を行っているため、調査に参加している総人数が少ない傾向にある。報告者としては、この人数を少しずつ増やしていくことが、研究成果の安定性にとっては不可欠であると考えており、この点を解決するためにもより積極的にフィールドワークを実施していくことが今後の方策である。
|