Research Abstract |
本研究は, 平成25年度から実施される新しい学習指導要領に対応した世界史授業の在り方を探求する試みである。新たな学習指導要領では, 言語活動を重視し, 伝統文化や歴史に対する学習を深めることが求められている。従来の講義中心の授業形態を打破するために, 内容と方法の両面において改善を図った。内容については, 文章だけでなく, 年表や地図に加えて映像資料を活用し, 実際に体験した方々の話を聞くことができた。これによって臨場感をもって歴史を知る機会となった。従来使用されてきた文字資料だけでなく, 証言記録や写真・映像など非文字資料の利用を行った。また, 方法については, 満蒙開拓に関する資料館のホームページを活用した。 研究方法は, 高校1年生を対象とする授業案を構想するとともに, その準備として, 今春長野県に開館した満蒙開拓平和記念館を生徒とともに訪問した。現地で開拓経験者から体験談を聴講し, 対話を行ったほか, 展示品を閲覧した上で感想文を書いて歴史理解を深めさせた。 研究成果として, 今年3月に高校1年生を対象に, 満蒙開拓を扱った授業を実施した。NHKが制作した長野県から満蒙開拓団に参加した人々の証言記録を視聴し, 既習事項と関連付けることで理解を深めた。日本が置かれた位置や, 政治指導者以外の民衆がどのような困難に直面したか等を考えさせ, 歴史が一部の人間によって作られたのではなく, 多くの人々の生活に関わってきたことを理解させようとした。 満洲と呼ばれた中国東北地方について, 自然環境や産業等の点において日本と比較しながら理解を深めさせた上で, 1930年代の世界情勢と関連付けて満蒙開拓の背景を説明した。NHKの証言記録を活用し, 教育現場において教師が生徒に満蒙開拓を奨励したことを事例として取り上げた。体験者が語る満蒙開拓の厳しさを生徒は熱心に聴講した。 以上の試みについては, 研究成果をまとめ, 校内紀要に投稿し, 掲載された。研究成果としては, 生徒との教育活動記録のほかに, 生徒の感想や関連史料等をまとめた。新学習指導要領において, 資料や資料館等の活用が求められるようになり, 新たな授業の在り方を考察することにつながった。
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