Project/Area Number |
25905003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
地理学・文化人類学・地域研究
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Research Institution | 一橋大学大学院社会学研究科 |
Principal Investigator |
黒崎 裕子 (山口 裕子) 岡山大学, 社会文化科学研究科, 客員研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2013: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | インドネシア・ブトン社会 / 不名誉な自社会史観 / 共産党粛清 |
Research Abstract |
本研究の目的は、スハルト政権初期の1960年代末以降のインドネシア地方社会の動態を、東南スラウェシ州のブトン社会を中心に、「赤狩り」の中で故地から離散したブトン人の経験と、現在の彼らの歴史観に特徴的な「不名誉なブトン社会」像に着目しながら、実地調査と史料考証により探求することである。平成25年度は、①当該州にて実地調査を行い(2013年8月25日-9月6日)、当時を知る関係者らに対して体験談やライフヒストリーの広範な聞き取りを行った。②文献研究及び研究会参加等を通して、独立期から1960年代以降に至るインドネシアをめぐるよりマクロの社会情勢を探求した。 ①の聞き取りは、赤狩りの直接の被害者や妻子など10余名を対象に、自宅のみならず、拘留跡地、遺族の墓地など当時ゆかりの「記憶の場」への訪問を通して行った。これにより、逮捕拘留時の個々人の状況や離散経験をはじめ、東南スラウェシ地域の被害者の規模や年令、職位、および加害者の情報の概要が捕捉できた。これらの過去が現在のブトン地域の社会的周縁性の原因として語られることにより、「共産活動の拠点だった」という「不名誉な自社会史観」が生成し固定化する萌芽的状況が看取された。自己と他者の経験の混同や、夫婦間、世代間での記憶の食い違い、「拷問の鞭が命中せず砕け散った」という奇跡譚などの特徴が見て取れた。これらは出来事の再構成の観点からは捨象されるかもしれないが、語り手の現状や記憶と史実性をめぐる議論に対して示唆的な特徴として分析している。スラウェシ地域に相当数潜在すると見られるサイレントな犠牲者と、加害者に対しても今後聞き取り調査を行う必要性がある。 ②では、共産主義をめぐる中-イ関係や、冷戦構造など1960年代前後の国際関係と、国境付近をめぐるインドネシアの対外政策の概要が捕捉された。これらのメゾ・マクロの社会状況とスラウェシ地域との関連性については継続して探求している。
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