Research Abstract |
本研究の目的は, 子どもの思考力を促す教師の「投げかけ」に関する発問のあり方を探ることである。 研究方法としては, 幼稚園年長児保育者と小学校生活科担当教師が「どのような場面」で「どのような投げかけの言葉がけ」をすると, 子どもが「どのように思考する」のかをビデオカメラで観察した。 その結果, 次の3点が明らかになった。 1. 年長児保育者・小学校生活科担当教師とも考える対象となる事物・事象の具体的な特徴について「尋ねる」「示す」「比較する」「確認する」「ヒントを提示する」「子ども同士が互いの考えを交流できるような場を設定する」かかわりを行っている。このことによって, 子どもは対象となる事物・事象についてより具体的に考える意欲や態度を示したり, 気づいたりする姿が見られた。 2. 年長児保育者の場合, 子どもの思いや気づきに対して「復唱する」「認める」「同意する」「うなずく」かかわりを積極的に行っている。これは子どもが自分なりに考えていることに自信がもてるよう, あるいは自分の思いが安心して出せるようにするためと考えられる。 3. 小学校生活科担当教師の場合, 子どもの気づきが拡散するような「きっかけをつくる」, 子どもの多様な意見が収束するように「条件を整理する」「導く」, 学習課題を「明確に示す」かかわりを行っている。これは, 1時間の授業の中での学習課題が明確に示されているためと考えられる。また, 子どもの気づきがより言語化できるように促したり, 板書を通して課題がより明確になるように工夫したりしている。 以上のことから, 子どもの思考力を促す教師の「投げかけ」として, 子どもが自分の思いや気づきがありのままに出せるようにすること, 学びの対象となる事物・事象の特徴を教師が詳細に把握しておくこと, その年齢にふさわしいねらいに応じたかかわりであることの必要性が分かった。
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