[研究の背景と目的] 教育についての改革が行われ続けている。その目指すところは、自律的な学校運営、自律的な教育の実現である。そのためには、教員の自律性が必要であり、生涯にわたる資質能力の向上が求められている。その成果を評価し、さらに教育活動、教師の質の保証や向上を目的として評価制度が導入されている。代表的なものに学校評価、教員評価がある。ところがこれらの実施の効果について、学校経営に対する意識の変化や教員評価の時の管理職の面談の効果はあるものの、改革の根幹をなす教員の資質能力向上については、学術的研究調査によれば実効性が低いことが報告されている。実効性に関わっている要因を明らかにし、実効性を改善する方法を探求することを目的とする。 [研究方法] 質問紙調査の分析を主な研究手法として採用した。質問紙調査の対象として、申請者が所属する自治体の高等学校を取り上げた。質問紙調査の回答結果を、統計解析ソフトを用いて解析し、実効性に影響を与えている要因を明らかにする。 [研究成果] 研究対象とする「学校評価」と「教員評価」について質問紙調査を行いそれらの関係性を明らかにした。その研究成果として、第1に学校評価および教員評価の運用において4つの因子を抽出した。第2に4つの因子のうち評価の有効性に影響を与えるものは、「行動改善」の因子であることが分かった。第3に教員評価において有効性を向上させるためには現在の管理職と教師との個別のコミュニケーションを行う形態のみでは限界があることが推測された。第4に教員評価についての先行研究における教員の資質能力向上感が低い原因として、目標管理手法における自己目標達成感と教師の資質能力向上感とにずれがあることが一因である可能性を示せた。また、教師の資質能力には「自身の取組中の省察」「自身の取組後の省察」「相互補助的な職場環境」が必要であることを明らかにした。評価の目的の実効性改善のための評価システムの要件を明らかにできた。
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