○研究目的 本研究は、教員の資質能力向上及び質保証という課題について、文部科学大臣優秀教員表彰制度の被表彰者(以下「優秀教員」)を教職の成功モデルと推定し、彼らの資質能力向上に関する実態を明らかにすることにより、教育行政及び学校経営上の条件整備・支援策の在り方を考究することを目的に取り組んだ。 ○研究方法 本研究では、教員の資質能力に関する意識とその形成・向上の機会・要因の解明、優れた教員を養成・採用・育成するための方策に関する提言の集約を基軸として、2012年度の優秀教員並びにその所属校校長及び一般教員の三者を対象にした質問紙調査を実施した。また、研究計画に基づき、優秀教員表彰制度等に関する地域間の差異を確認するための情報収集を行った。さらに、外国の研究成果と比較を行うため、類似研究の資料収集を実施した。 ○研究成果 調査結果の分析を通じて得られた知見を整理すると、以下の点に集約することが可能である。 1. 資質能力に関する優秀教員の謙虚な回答傾向が明らかになった。それは、到達目標に基づく相対的位置関係からの影響であり、自己向上を目指して学び続ける原動力になっていると考えられる。 2. 資質能力の形成・向上の機会・要因として、養成段階の比率が相対的に低い一方で、大学の資源を活用した現職研修の効果は極めて高い結果が明らかになった。したがって、大学と教育委員会・学校の相互参画の促進により、養成段階の改善及び現職研修の高度化の双方に相乗効果が得られると考えられる。 3. 学び続ける基盤となる資質能力の形成には、同僚性の高い職場環境における「模範となる先輩教員」とその優れた実践との出会い・交流が好影響を与えることが明らかになった。現行制度の運用改善等により、優れた人物・実践との接触・交流機会を創出することは、教師教育における重要な課題であり、特に現職研修の段階での重点的な対応が必要である。
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