Research Abstract |
単元は, マイワシの手開きと資料「主要国の国民1人当たりの食用魚介供給量と平均寿命の関係」の提示→個人追究→魚の栄養・効能, 種類, 調理方法の発表と検討→個人追究→「魚離れ」の原因の検討(消費者の問題, 漁獲量の減少と買い負け, 東日本大震災・放射能汚染)→原因に対する提言づくりと交流→提言を活かした「魚の調理実習」→まとめの作成で展開し, 以下の点が明らかになった。 第一に, 発表と検討で教師が「消費者の魚離れ」, 「放射能汚染」に着目した意見を取り上げたことで, 子どもは, 生活の問題がどのように社会と関わっているのかを考えた。グループに分かれ, 漁協や小売業者を取材したり, 調理して確かめたりした。子どもへのインタビューによると, 何を追究するか教師が提起してよいが, 課題の選択, 調査検討の方法については子どもが関与できること, それが許されていることが大事だと考え, 評価しているようだった。 第二に, 食品中の放射性物質の基準値について, ICRPモデル, 閾値モデル, ECRRモデルについて議論し, 「一応の安全基準を社会はもつべきだが, どの数値までならよいかは個人で決める。食品ごとに放射線量を表示し, 情報を流すべきだ」と話し合われたことは重要である。放射能汚染という答えが分からない問いを扱うことに対して, 分からないから考えない方がいい, 考えてもどうすることもできないとする子がいる一方で, 専門家でも意見が分かれているからこそ自分の意見をもつべきだ, 何がいいのか考え情報を集め, 意見をまとめることができてよかったと評価していることがインタビューから分かった。課題として, 基準値の決め方や放射線の人体への影響が理解できていない点, 「風評被害」について討論したい子がいたにもかかわらず, できなかった点が挙げられる。教師がどのように議論の争点を見据え, テーマを立ち上げ検討していくかが課題である。
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