Research Abstract |
1 目的 イギリスのエネルギーの移動を中心概念に据えたエネルギー概念導入の方略をベ一スに, 中学生を対象にエネルギー学習プログラムを開発, 試行する。さらに, プレ・ポストテストを実施し, 本プログラムの有効性を検証することを目的とする。 2 方法 ①主にイギリスをはじめとしたエネルギー概念導入の特質の分析を行い, これらを基礎とした学習プログラムを開発する。 ②試行授業を実施し, 生徒の変容をアンケート調査等により評価し, 授業の有効性を検証する。 3 成果 イギリスの初等教育段階KS1・2段階の教科書の1つNew Star Science (Ginn社)とその教師用指導書, KS3段階の教科書"Spectrum" (Cambridge University Press), "Science" (Collins), "Framework Science" (Oxford), "Spotlight Science" (Nelson Thornes)について, エネルギー概念に関する記述の分析を行った。それによると, KS1・2段階では, 6年生の電気や食物連鎖の学習でエネルギーの記述が幾つか見られるのみである。KS3段階の各社の教科書のエネルギーの単元では, エネルギー資源や電気の学習に関連して構成されている。同本やアメリカでは, エネルギー概念の導入を主に位置エネルギーや運動エネルギーなどの力学分野を中心に行うのに対して, イギリスでは, 主に電気やエネルギー資源の内容と関連付けて導入を図っている点に特徴がある。また, ナショナル・カリキュラムで記載されたエネルギー概念の導入の特徴である「エネルギーの移動」は, 4社の教科書で学年は異なってはいるが, 3年間のどこかに必ず「エネルギーの移動」という名称の小単元が設定されている。エネルギーの移動については, その形態を変えながら空間や物質内を移動する様子を図を用いて視覚的に表現しているものが多かった。そこで, その方法を日本の中3理科におけるエネルギーの学習場面に適用し, 試行授業を行った。その結果, エネルギーの移動の理解だけでなく, 変換効率への理解を促進する効果も見られ, その有効性を見出すことが出来た。
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