本研究では、地域の資源である「塩」を教材化し、小学校児童を対象とした「塩の学習」のカリキュラム開発に取り組んだ。当該地域では、江戸時代より塩田が営まれ、現在も製塩業や塩の活用が盛んである。本カリキュラムによる実践研究を行うことは、地域の身近な素材を生活に有効に生かす科学のすばらしさに気付かせると共に、地域の自然環境を生かした持続可能な社会を構築しようとする意欲を持った児童の育成につながると考えたからである。 ここでは、塩を3つの視点(①地球の大地が生み出すもの(資源・環境)②生命を育み守るもの(生命・健康)、③生活とつながるもの(塩の利用))と、4つの区分(①塩に親しむ、②塩を知る、③資源としての塩の環境を守る、④塩を活用する)でとらえて、カリキュラムを作成した。 、低学年では身近な塩の存在や塩の不思議さに気づく体験型の教材開発を中心に、中・高学年では、理科の目標や内容(例えば、5年 : 水溶液の性質、6年 : 人の体のつくりと働き等)及び社会科の地域学習との関連を図りながら、発達段階に合わせて3つの視点・4つの区分を関連づけるように試みた。 試案の学習内容の中でも特に重要な内容を選択し、模擬授業等を行い、その評価に基づき、再検討した。 様々な形で実生活とつながりの深い「塩」を中心とした学習を総合的な学習や理科の発展的・補充的学習内容として横断的に実施することにより、「エネルギー・粒子」「生命・地球」などの科学の基本的な見方や概念形成に有効であることが一定程度実証された。このことにより、本研究は現行学習指導要領理科の改善の基本方針である実社会・実生活との関連を重視する内容の充実につながり、知識・技能の実生活における活用を促進し、社会における自然科学の有用性を実感できる学びを保障できると考える。
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