我が国では農業離れが進行し、さまざまな問題を引き起こしている。そして、日本の社会全体に大きな不安を生み出している。もっと農業のあり方について国全体の問題として真剣に考えていかねばならない。それは将来、社会に出て行く子どもたちとて例外ではない。子どもたちに今の段階から「農業」について何らかの形で意図的な体験や学習をさせていくことが必要になってくるだろう。しかし、今の学校はさまざまな制約があり、十分にできているとはいえない。現在、小学校の教師をしているおり、それを痛感している。校区に田畑がたくさんあり、田畑に囲まれて生活をしている子どもたちにとっても、農業は身近な仕事ではない。農業について十分な体験や学習が行われているとは言えず、食べている作物はあって当たり前と思い込んでいるからである。 子どもたち、特に低学年の子どもたちは学級園、鉢、プランターなどで作物を育てることに大変意欲的に取り組んでいる。作物を栽培する活動自体が大好きなのである。しかし、学年が上がるにつれて、作物栽培に興味を持つ子が減少していく。その原因として、学校のカリキュラム、学校で栽培する作物の種類や栽培する場所、指導法、評価のあり方などに大きな要因があると思われる。そこで、中高学年児童に、次のような点を考慮して学校内で取組を行うことにより、もっと、作物を育てること、農業に関心を持つ児童を育成していけるのではないかと考え、以下の実践研究を行った。対象は小学校4年生、5年生である。 1栽培する作物の工夫(子どもたちが興味を持つ作物のの栽培)大きなピーマン落花生巨大大根人参 2栽培する場所の工夫(教室内やベランダなどでの栽培も導入する)ペットボトル容器の活用 3栽培する時期の工夫(学校でほとんどされていない秋~春にかけて、作物栽培の実施)冬野菜の栽培 4栽培活動に創意工夫できる要素(土作り、栽培の仕方など一律ではなく、創意工夫できる余地を入れて、競争をさせた)土の成分を自分たちで工夫させた。 5農家の人が体験している作業を学校内で体験させた。(肥料のやり方、整枝、害虫対策、いい土作りなど) 6栽培活動に対する評価のあり方を工夫し、意欲付けを図った。 自分が栽培している場所にこまめに足を運び、成長ぶりを観察していた。また、家族や校務員、農家の人などにたずねて工夫するなど意欲的な活動が見られた。家庭で自主的に取り組む子も増えてきた。
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