Research Abstract |
本研究は, 各教科教育の中で断片的に行われてきた統計教育を体系化するべく見直し, 数学教育では基本的な知識や理論の修得を, 情報教育では理論を基にした実データによる実践的な分析力の育成や適切なソフトウェアの利用による表現法の育成, 社会科教育では資料や表から必要な情報を読み取る能力の育成, 理科教育では観察や実験で得た実データを分析する的確な判断力の育成, その他の教科教育においても状況に応じた能力の育成を指導目標とする各教科の単元を提示し, 各教科で確実に抑えるべき具体的内容を明確にして有機的接続する道筋を明確にすることで, 生徒の統計的思考力(Statistical Thinking)を育成し, 高めることを目的とした実践研究である。 具体的には前年度までの基礎研究や知見を活かし, 数学, 情報, 理科(化学), 地理歴史(地理)における統計教育教材を作成した。特に数学I「データの分析」では, GRAPESを用いた「平均」「分散」「標準偏差」「共分散」「相関」「回帰直線」の教材を作成し, 高校1年生に対して授業を実施して得た知見を得た。さらに各高等学校の通常授業の枠組みの中で有機的に接続して実施できる持続可能な統計教育カリキュラムの在り方や例を実際に教育課程表に対応させて, 別に教科横断的な授業実践を行った。またその詳細を各種学会にて発表し, その意義や効果が実証され, 最終的に統計的思考力育成を目標とする教科横断型カリキュラム作成のガイドラインと1例を構築するに至った。 本研究は, あくまで1例であり, 学校や教科の状況に応じた学校ごとの教科横断的なカリキュラムの策定, さらに共通教科「統計」設置の必要性もまた明確となった。今後は教材をWeb上に公開して自由に使用できるようにし, その知見を広く中等教育現場で共有すること, そして大学学部教養で行われる統計学の内容を確認し, 生徒が無理なく接続できるかを精査すること, 大学学部教養レヴェルの内容に接続できうる教科書や指導書が必要となるだろう。
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