Research Abstract |
○研究の目的 本研究では「算数を生み出す力」のうち, さらに「①算数できまりや方法などを見つける力(主に帰納・類推), ②算数で前提をもとに確かめる力(主に演繹)」に焦点をしぼって, その「つけたい力」を育成するための教科書教材のふくらませ方について分類・整理し, 構造化することを目的とした。 ○研究方法 ・帰納, 類推, 演繹的推論に関する先行研究および, 実践的研究を調べる。 ・多数の先行研究実践から帰納, 類推, 演繹的推論を引き出す教材化の工夫を言語化して分類, 整理していくことで構造化をはかる。 ・実験授業を通して, 検証することで構造化の有効性をたしかめる。 ・実験授業の検証方法は, WigginsとMcTigheの提唱する「逆向きの設計(backward design)」(Wiggins & McTighe, 2005)の考えをもとに行う。具体的には, 学習目標(「望まれている結果」)を児童がどの程度達成したのかを具体的に示す「承認できる証拠」として, パフォーマンス課題及びルーブックを作成し, 研究授業を行う。その効果をパフォーマンス課題の結果および, 授業記録, 児童のノートやワークシート, 作品などにより分析し, 成果と課題をまとめていく。 ○研究成果 先行研究実践から, 帰納的推論を引き出す教材化の工夫として「試行の場」→「整理の場」を授業構成で仕組むことが有効ではないかという仮説をたて, 実験授業で有効性を確かめた。「試行の場」とは, まずは全員で問題にあたり試行してみる場面である。ここでは, 全員が簡易に確かめられるシンプルな問題設定が望ましい。試行するなかで, 複数のデータが集約される。次に「整理の場」では, 集約されたデータを分かりやすく整理する場面をつくる。整理することが数量間の共通性の発見につながり, 帰納的推論を引き出す。一方, 類推的推論を引き出すに教材化の工夫として「条件不足」の問題提示が有効であることが明らかになった。問題解決に必要な条件をあえて隠すことで, 類推的推論を引き出す。演繹的推論に関しては本年度だけではまとめることができなかった。来年度も, 引き続き実践を重ね, その成果と課題を生かして教科書教材のふくらませ方について構造化を図っていきたい。
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