人間が地球規模のエネルギー生産・消費の在り方や地球環境の保全等を考える際に科学概念を活用することは極めて重要である。粒子概念は小・中・高校生が習得し難い基本的な科学概念である。質量不変の法則・化学量論・化学平衡式に関する知識は粒子概念の習得に必要不可欠であるが、多くの高校生はこれらの知識を習得し難く、中学理科の「原子・分子」の学習内容についての理解不足がその原因の1つと報告されている。 国立教育政策研究所は、中学2年生(約4.7万人)の約50%が酸化銅の生成反応を表したモデル図に基づき化学反応式を書き表せない、又約27%しか水素2分子と酸素1分子から水2分子を合成する化学変化を化学反応式で書き表せない等と報告した。化学式・化学反応式の基本的な規則が多段、且つ複雑であることがその原因の1つと考える。 「指令とその復唱」は、航空機のCRM (Cockpit/ Crew Resource Management)や大型船舶のBRM(Bridge Resource Management)の主要な構成要素であり、事前に行動内容を発話することを出発点とし他者の承認を得て安全な操舵を目指す。指令とその復唱を取り入れた相互作用学習と理科実験器具のモデル教材(操作の一部を疑似体験可能な実物教材)の製作・リハーサルの指導法を併用する学習法が、理科実験器具の操作技能の習得を促すことが明らかにされている。実験器具の操作手順と化学式・化学反応式の基本的法則の指導上の共通点は、それらが多段、且つ複雑であることや、その指導に疑似モデルを用いることである。 授業実践による事例的研究の結果、先の学習法が中学生の教えあいに必要な知識や能力を高め、化学式・化学反応式を書き表す知識の習得を促すことが示唆された。一方、中学生は電子の移動・共有の仕組み(上位の学年の内容)を理解し難く、原子が何故離合するか納得し難いという課題が残った。
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