Research Abstract |
本研究では、中学生によるデジタルストーリーテリング(以下DSTと記す)の制作及び鑑賞を通して「内省力を高め合える言語活動」としての有効性を明らかにすることを目的としてきた。 実践段階では、中学3年生国語科において、単元と関連させたテーマ「未来への伝言No, 1」「自己PRビデオ」「吾輩は○○である」「短歌ありがとう」「未来への伝言No, 2」を設定し、年間5回の授業実践を行った。教科指導にあたり、質的分析ソフトによる第1作目の原稿分析によって、内省力の変容をどこに見出せるかを探り、勤務校内外の教育関係者に意見を求めた。そのため、校内研修および大学研究室内外でのポスターセッションや発表を複数回行い、研究目的の説明を行った。ここで得た要素「独自のエピソード」「意志(今後の展望)」を、以後のDST作品に入れるように指導し生徒が自分に目を向けられるように意図した。鑑賞・感想交流は、校内LANを利用してMoodle (LMSの一種)を活用し、各自のペースでの交流を可能にした。 検証段階では、(1)自意識尺度(菅原1984)を3カ月ごとに用い、自意識の変容を調べた。(2)「所要時間」「操作・作業の様子(原稿作成・画像選択・録音・鑑賞)」「感想の変化」「任意に抽出した3人の生徒の原稿比較」を、全ての実践で行った。方法は、ビデオカメラによる授業風景の撮影、インタビューや定期的なアンケートによる意識調査、原稿内容およびMoodleに残された感想のカテゴリー化によるものである。 本研究の成果として、(1)公的自意識の発達と関連があること、(2)作文発表と比較して、表現・理解を補い内省につながるコミュニケーションを円滑にする効果があること、(3)Moodleとの併用により、共感・理解・発見を繰り返すことで、他者理解・自己理解を深める効果があることが示唆された。 今後は、(1)短時間で同じ効果が得られる方法を考えること、(2) DST独自の客観的な指標を作っていくことを目指し、授業で活用しやすい形にしていきたい。
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