重複障害児の生活のニーズとして、①快適に日常生活動作に関する支援を受けること、②趣味的な活動の充実が考えられ、以上の2点について支援機器の有効な活用について研究を実施した。 ①は歯磨きにおいて、電動歯ブラシの実施を計画した。対象の児童は、口腔の感覚に若干鋭敏さがあり、通常の歯ブラシでブラッシングすることに僅かながら抵抗があった。電動歯ブラシを導入すると振動感覚を利き手や頬で感じ、教師と一緒に自ら口元に歯ブラシを入れることがあった。2回目以降は、電動歯ブラシを提示すると、利き手で把持し振動刺激を楽しんだ後、電動歯ブラシを使用した。 ②は生徒が操作しやすいスイッチを用いることで、積極的に音楽を再生することを計画した。生徒の障害は筋疾患であり、給食時間には胃瘻による経管栄養で食事を行っている。その給食時間に、教師と関わりながら好きな音楽を再生する機会と機器を導入した。具体的には、教員は10枚ほど楽曲を想起できる写真カードを順番に提示し、生徒は発声や表情で再生したい楽曲を選び、操作しやすい「振動するにぎるスイッチ(本研究において開発を行った)」を用いて楽曲の再生を行った。楽曲に応じて、身体を動かすことや曲想に応じて教師に視線を向けることなど、音楽を再生し楽しく注入の時間を過ごすようになった。 ①電動歯ブラシの利用については、振動する感覚が児童に定位した情報を提供し、次第に心地よく感じとれるようになった。また、これまでの歯ブラシでは支援者によってブラッシングの強さ等が微妙に異なることが予想され、電動歯ブラシの導入により歯磨きの手続きが安定し、安心して行えるようになった。 ②では、ご家庭からも楽曲の提供があり、趣味的な活動に支援機器を活用し主体的に関わることで、一層充実した活動に展開した。
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