Research Abstract |
地中ガス成分の中で^<222>Rn, He, H_2, CH_4, CO_2等は断層位置の推定や活動評価等に利用される. 地中ガスの観測では観測点の選定, すなわち地下活動に対する応答性の良い地中ガスをいかにして抽出するか, が重要になる. 応募者は, 活断層上で測定される^<222>Rn(以下, ラドン)濃度の時間的変化の特徴に, ラドン(半減期3.8day)とその娘核種の^<218>Po(半減期3.1min)との関係が非平衡状態にある場所がどの活断層上においても一部に存在することをこれまでの経験から得ている. この特徴は噴気地のように地下ガスの上昇が活発なところでみられる傾向で, 一般的な地温勾配を持つ断層上でも一部に非平衡状態のラドンが存在するということは, 地表に向かって地下からのガスの供給が継続的に行われている可能性が高く, またこのような場所はラドン以外の地中ガス成分に対しても共通の放出口として存在するのではないかと考えている. そこで本研究は測定対象をH_2に定め, 熊本県上益城郡甲佐町にある日奈久断層上においてラドン濃度が非平衡状態, 平衡状態を示す場所にそれぞれ測定孔を設けH_2濃度の連続測定を実施した, 測定間隔は1分間, 測定期間は78日である. ここで非平衡状態のラドンが測定された測定孔を測定孔①, 平衡状態が測定された測定孔を測定孔②と称す. 各測定孔では週1回(計11回)ラドン濃度も測定した. 以下に結果を示す. H_2濃度の78日間での平均値は測定孔①で4.8ppm(標準偏差0.9), 測定孔②では3.9ppm(標準偏差1.7)であり, これは1日あたりの平均値と標準偏差においても同様の傾向であったが, 互いの濃度変化については非常に高い相関性(相関係数0.94)を示した. そこでH_2濃度の変動の要因を地球潮汐, 降雨, 気温との関係で比較したところ, 気温の変動との相関が強く測定孔①は相関係数0.79, 測定孔②では相関係数0.78であった. さらに測定孔②に至っては気温の変化に対しマイナス1日の補正を行うと相関係数0.83(測定孔①は0.78)と高くなることがわかった. 以上のことから, 地中ガス中のH_2は気温の変化に依存して変動するが, 非平衡状態のラドンが測定された測定孔①では比較対象の測定孔②に比べ濃度が高く, 気温の変化に依存した変動幅も小さい. また, 気温の変化に対する応答性も1日遅れでピークを示す測定孔②よりも良い反応を示すことが明らかになった. これは, 土壌中における地中ガスの拡散速度や選択的に上昇する経路の違いによるものと推測され, 地中ガス観測点選定の指標としてラドンの放射性平衡状態を考慮する有効性が確認された.
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