Research Abstract |
岩手県田野畑地域で採集された白亜紀後期アプチアンから前期アルビアンの軟体動物化石の分類学研究を行った。総数約500個体について国内外の先行研究と比較検討したところ、アンモナイト32種、オウムガイ1種、ベレムナイト2種、巻貝16類、二枚貝25種が認められる。これらのなかには、当地域では初めての産出報告となるタクサや、先行研究でリストされていても図示のないタクサが多数含まれていることが判明した。 そこで本年度はとくに、本邦では研究例が少ないフィロセラス類アンモナイト(Euphylloceras, Goretohylloceras, Phyllopachyceras)とリトセラス類アンモナイト(Protetragonite, Pictetia, Tetragonites)について、殻内部構造や縫合線の詳細な観察記載を行った。このうち、殻がとても緩く巻Pictetia属について次の成果を得た ; (2)標本はPictetia astierianaに同定される。(2)これまでPictetia属は、殻の外形や表面装飾の特徴からリトセラス亜目(平面巻アンモナイト類)に属すとされてきた。しかし、本研究で初めて明らかとなった幼体期の縫合線の特徴に基づくと、Pictetiaの帰属先をアンキロセラス亜目ハミテス科(異常巻アンモナイト類)とするのが適切である。 早稲田大学の文系対象の教養科目の授業と社会人向け講座で、本研究で使用した白亜紀軟体動物化石と同地域産のオルビトリナ石灰岩(現在のサンゴ礁地域に相当)を現在の試料と比較して観察した。白亜紀は現在とくらべて温暖な時代である。この実習によって「温暖化すると地球はどうなるのか、生命圏はどうなるのか」という命題を人気の古生物を媒体として体験的に学ぶことができた。
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