Research Abstract |
【研究目的】 交通事故において, ヘッドライト点灯状況は事故捜査における有用な情報の一つである。「Post-Impact Examination of HID Headlamps」, Matthew L. Schwallほか, SAE International, pp. 107-114, 2010によれば, HIDが点灯中に衝撃を受ければ, 電極表面に付着している水銀の凹凸がなくなると発表されている。実際の事故車において, 電趣の凹凸がある場合とない場合の2種類が存在するのは確認しているが, どのような条件で電極が変化するのか詳細なデータがなく, 実験により検討した。 【研究計画】 HID (Valenti JAPAN製)を以下の条件で実験を行い, HIDの電極変化を調査した。 ①無点灯もしくは点灯のHIDをプラスチックの箱で囲い, 約30㎞/hで壁に衝突させる ②HIDを無点灯もしくは点灯状態でモリブデン箔を破損 ③HIDを無点灯もしくは点灯状態で発光管を破損 【結果】 ①②に関して顕著な変化は見られなかったが, ③に関して点灯状態の場合は電極が黒に変色し, 電極の凹凸が無くなった。理由としては, 電極の凹凸である水銀がHID点灯時に気化し, HIDが破損することで気化した水銀が空気中に飛散して電極の凹凸が無くなると推測できる。 ただし, ③の無点灯状態においては電極の凹凸が存在したが, 時間が経過すると, 電極の凹凸が無くなった。これは破損したことにより密閉ではなくなり, 空気中へ凹凸の水銀が徐々に自然蒸発したと推測できる。 以上のことから, HIDの発光管が破損した状態で電極が変色なく, 凹凸があれば, 無点灯状態で破損したと言え, 事故捜査に有用な情報と考えられる。 また, 平成24年度のアリオンのデータをDST-PCで抽出すると, ABS作動時の加速度情報等はあるが, 点灯情報は得ることができなかった。
|