1. 研究目的 研究代表者は、現在までに多孔質パネルの吸放湿メカニズムについて明らかにしてきた。一例として電子線マイクロアナライザーを用い、吸放湿に伴う水分移動のマッピング像による可視化を行ってきた。本研究ではこの調湿建材の特性を生かすため、簡単な設備を搭載した年間における調湿システムを考案した。具体的には、多孔質パネルの断面に穴をあけ、そこに微小な穴をあけたチューブを通し、これに空気あるいは水を流して除湿と加湿を行うものである。このシステムに、室内の温湿度を一定に保つための自動給水送風装置をさらに搭載した。 本研究で開発した装置を用い、室内を良好な湿度環境にする事を研究の目的としている。 2. 研究方法 多孔質パネル内の除湿量、加湿量の他、建物壁体内温度、室内温湿度について計測した。 3. 研究成果 1)自動給水送風装置の製作 : 室内の温湿度を一定に保つための自動給水送風装置を開発した。 2)夏期の実験結果 : 当該装置を用い、相対湿度70%から5%毎に値を上げた際の、それぞれのパネル送風時における除湿量を測定した。その結果、室内の相対湿度は24時間で約20%低下する事を確認した。また、その際のパネル1枚当たり(300×300㎜)における含水率の増加は1~2%で、重量の増加は2~4gであった。 3)冬期の実験計画 : 相対湿度30%から5%毎に値を下げた際の、それぞれのパネル給水時における加湿量を測定した。 また、室内の相対湿度を一定に保つための制御実験を行った。一例として、木造平屋建て11.8㎡、熱損失係数1.14W/㎡K、換気回数1.6回/hの建物を対象に、当該装置を用いて相対湿度を40%に保持する実験を行った。なお、システムの稼働時における給水量は4g/minである。 実験の結果、室内の相対湿度は24時間において40%に保つ事ができた。この時の、給水システムによる全給水量は3.0㎏であった。
|