Research Abstract |
地下水の動向を把握することは, 地下水汚染の拡大予測や地中熱利用における適地の選定など様々な分野において重要である。地下水の動向調査では, 既存の小孔径の井戸やハンドオーガーなどで掘削した簡易的なものなどを用いる場合があるが, このような小孔径の観測井に適用できるセンサーは少ない。本研究では, 単孔法による計測方法の一つである電位差法を用い, 孔径の小さい観測井において簡便に設置・計測が可能な地下水流向流速センサーの試作を行った。 センサー径はφ25mmとし, 主にステンレス製の本体, センサー部保護のためのステンレス金網, およびこれらを連結する樹脂製部品からなる。連結部品の中心にトレーサー投入用チューブ, その周囲半径5mmの円周上にステンレス製の電極を8個設置した。電極の外周にあるステンレス金網を基準電極とし, 内側の各電極との間の電気抵抗を電圧変化として検出する。計測にはマルチファンクションDAQを用い, LabVIEW2013にて計測プログラムを製作した。計測用の電源は, 分極を防ぐため500Hzの方形波をファンクションジェネレータによって供給した。実験においては, 珪砂を充填した模擬帯水層の中央部にセンサーを設置し, 上流・下流の水頭差によって流速を調整した。 実験では純水をトレーサーとして投入し, 各電極間の電圧変化を計測した。その結果, トレーサーの投入と同時に各電極間の電圧変化が増加したのち, 流れの上流側の電極では急激に減少し, 下流側の電極ではなだらかに減少する傾向が見られた。これは移流による各電極間のトレーサー濃度変化を示すものであり, このことから本装置に採用したセンサー径および電極配置が流向の検出に有効であることが判った。しかし, 本研究では流速の計測には至らなかった。流速を計測するためには, トレーサー投入方法の再検討や計測精度の向上などの必要性が実験でわかったため, 今後の課題とする。
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