本研究は、銀ナノ粒子インクを用いた電極の密着性改善を行うことで、印刷電極の密着性を向上させる技術を開発することを目的に行われた。 研究方法として印刷電極の下地層として表面処理剤を成膜する方法と、高分子材料をバインダーとして銀ナノ粒子インクに直接導入する手法が考えられた。実サンプルとして基板にガラス基板を用い、その上に下地層と銀ナノ粒子インクを成膜することで印刷電極を得ている。下地層の成膜方法はスピンコート法を、印刷電極の配線方法はディスペンサ法をそれぞれ採用した。印刷電極の密着性はセバスチャン法から算出した。 研究成果として、ガラス基板上に表面処理剤からなる下地層を導入することで、印刷電極と下地層との密着性が著しく改善されることを見出した。これは、下地層に高分子材料を用いたことによる接着性の向上が原因だと考えられる。また、下地層の有無に関わらず印刷電極の物性値(体積抵抗率、焼成後の粒子径など)に変化がなかったことや、下地層自体はガラス基板から剥離しなかったことから、本研究結果は実デバイスにおける実装技術として応用可能であることが示唆された。なお、既存の銀ナノ粒子インクにバインダーを導入する方法も同様に評価しているが、バインダーを導入後、インク内にて銀ナノ粒子の過凝集が見られたため電極材料としては不適切であることが示された。今後はバインダーを導入する方法についても継続的に評価を行っていく予定である。本研究の一部は第74回応用物理学会秋季学術講演会にて口頭発表された。
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