Research Abstract |
【目的】ブドウの着色不良は等級に密接に関係しており、生産現場で深刻な問題となっている. 果皮着色に影響を与える要因のうち, 栽培管理で対処できないものとして気象条件が挙げられるが, 果皮着色に適した温度条件にするためには, 冷房, 加温栽培等の高コストがかかる方法を用いざるを得ないのが現状である. そこで本研究では, 黒紫色系ブドウ'BKシードレス'を供試して, より低コストで果皮着色促進処理が可能な簡易的な方法の開発を目的とし, 主枝の一部のみを集中的に冷却し, 果皮着色に及ぼす影響を調査した. 【材料および方法】無加温ハウスに植栽の, 'BKシードレス'オールバックU字型短梢剪定12年生2樹を用いた. 2013年7月22日から10月4日まで主枝の中央付近の幅約20㎝に、冷却水循環装置を用い15℃に設定した冷却水が流れるチューブを巻きつけて, 17時から翌朝8時まで冷却処理を行った. 環状剥皮を行う処理区では, 6月20日(満開35日後)に主枝部を幅約2㎝で環状剥皮した. 冷却部樹皮表面温度は, 温度センサーを冷却部のチューブと樹皮表面との間に挟みこんで測定した. 樹幹内温度については, 主枝基部, 冷却部周辺, 主枝先端部に, 約3㎝の深さで温度センサーを挿入し測定した. 果皮色ついては, 色差計を用い, 糖度, 酸度についてはデジタル糖度計, デジタル酸度計を用い, 調査開始時より約2週間おきに調査した. 【結果および考察】冷却処理部を挟んで主枝先端側と主枝基部側の樹幹内温度差は, 18時から19時ごろかけて最大4℃前後の温度差を記録したが, その後徐々に温度差は小さくなっていった. 今回の冷却試験では, 冷却部位付近で冷却開始後~数時間は一定の樹幹内冷却効果がみられたが, 冷却部位から離れた個所では目立った冷却効果はみられなかった. L^*値(明るさと暗さを示す数値)から, 7月下旬には環状剥皮区において有意に着色が進み, 8月下旬には対照区と差が無くなるが, 試験区はやや着色が遅れ気味となった. 9月下旬においては試験区の着色が環状剥皮区と同等で対照区よりもやや劣っていた. これらのことから, 主枝の部分冷却処理は環状剥皮に比べて効力が遅く現れ, 効果も劣ると推察された.
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