Research Abstract |
近年、環境保全型農業が注目されている。除草剤を使用しない除草方法の一つとして除草機による埋没抑草方式があげられる。これは除草効果の他に、接触刺激による稈長の抑制効果があることが認められている。イネに対して有効な刺激が存在すれば、除草の際の強度調節ができ、さらに積極的に刺激を加えることも考慮できる。本研究では、イネに対する刺激の種類及び強度が生育や収量に及ぼす影響を調査する。 打撃刺激(Hit Stimulation : 以下、HS)と振動刺激(Vibratory Stimulation : 以下、VS)の処理を行った。HSは金属の棒で株上5cmを5回(HS5)及び10回(HS10)叩いた。VSは振動モーターで株上5cmを3秒(VS3)及び10秒(VS10)接触させた。処理は移植後30日、38日、44日に行った。供試品種は「つや姫」である。 移植後24日~73日の間にほぼ10日おきに計6回生育調査を行った。有意差は見られなかったものの茎数は対照区(395,538,524,511,458本/m^2)と比べて、HS10(402,595,616,554,474本/m^2)、HS5(413,555,568,524,477本/m^2)の順で高い傾向を示した。また、葉色は対照区(39.8, 40.2, 37.6, 39.3, 36.7, 33.6 SPAD値)と比べてHS10 (42.9, 40.6, 39.1, 41.1, 38.4, 35.3 SPAD値)が高い傾向を示した。稈長は対照区(66.7cm)と比べてVS10(59.8cm)が5%水準で有意に低い値を示した。収量は対照区(586kg/10a)、VS3(595kg/10a)、VS10(595kg/10a)、HS5(546kg/10a)、HS10(537kg/10a)の間に有意差は見られなかった。幼穂形成期と収穫期に地上部窒素吸収量を測定した。有意差は見られなかったものの対照区(9.36g/m^2)と比べてVS3(6.88g/m^2)で低い傾向を示した。 打撃刺激は茎数、葉色に影響を及ぼし、強度が強いほど顕著であった。振動刺激は稈長、N吸収量に影響を及ぼすことが示唆されたが、強度による違いは分からなかった。収量の差はなかったものの、生育の変化は認められたといえる。さらに精査して収量や稈長抑制に結び付けることができれば、除草の際の強度調節や積極的に刺激を加える効果につながる可能性が示唆された。
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