【目的】てんかん患者では、うつ症状や認知障害など精神医学的合併症が認められており、抗てんかん薬によって発作が抑制されていても、精神症状が発現することが報告されている。従って、てんかんによって生ずる精神症状に対する治療法の確立が重要と考えちれる。そこで、本研究ではてんかんのモデル動物であるキンドリングマウスを作製し、行動薬理学的手法を用いて、てんかん病態時における情動機能の変化を検討した。 【方法】4週齢のICRマウスを用い、中枢刺激薬であるペンチレンテトラゾール(PTZ) 40mg/kgを腹腔内に隔日投与し、PTZキンドリングを形成した。キンドリング形成が完了したマウスを用いて、行動薬理学試験は回転棒試験、および高架式十字迷路試験を行った。対照群には生理食塩液を隔日投与したマウスを使用した。 【成果】キンドリングモデルは、回転棒試験において対照群に比して、有意な回転棒落下時間の短縮が認められ、協調運動障害が確認された。高架式十字迷路試験において、キンドリングマウスは、open armへの滞在時間が対照群に比して有意に延長し、覗き込み行動の回数も有意に増加したことから、不安閾値の低下および注意力の低下が考えられた。本結果から、てんかん症状による精神医学的合併症として、協調運動障害および不安閾値の低下が示唆された。特に、てんかんモデルを用いて協調運動障害を検討した報告はなく、今回の検討において見出された協調運動障害の改善を検討することで、今後てんかんにより生ずる精神医学的合併症の治療法の確立につながると考えられる。
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