水腎症は、腹膜播種による尿管の狭窄も原因として挙げられる。CPT-11は胃癌の二次治療以降に広く使用されているが、腹膜播種の状態で使用されることも珍しくない。研究者は過去に、水腎症を有する胃癌患者でGrade4の好中球減少を経験した。しかし過去に水腎症とCPT-11の副作用に関する報告は見受けられない。そこで本研究は、2010年1月~2013年3月に胃腸外科でCPT-11を使用した胃癌患者を対象に、CPT-11による副作用や投与量、投与回数について調査を行い、水腎症がCPT-11の副作用発現に影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。副作用はCTCAE ver. 4に従って分類した。 CPT-11投与期間中に水腎症を発症した症例は50例中5例(10%)であった。水腎症発現群は全例低分化型で、3例が腹膜播種症例であった。その他、水腎症の有無と患者背景や投与量に差は認めなかった。消化器毒性(下痢や食欲不振など)の重篤度に差は認めなかった。血液毒性は、好中球減少(Grade4)の発現が水腎症非発現群で45例中4例(8.9%)、発現群では5例中2例(40%)であった。水腎症非発現群におけるCPT-11の投与回数の中央値は6回(最少1回―最大28回)であった一方、発現群では1回のみの投与が1例、2回が1例、3回が2例、11回が1例であり、治療継続が困難な例が多くみられた。なおUGT1A1は水腎症発現群4例で未検査であり、非発現群の検査実施率も42.2%にとどまっていたため、本結果は遺伝子変異による影響を検討していない。 以上の調査結果から、水腎症を有する胃癌患者では好中球減少が重篤化しやすい傾向が見られた。これはFA de Jongら^<1)>の、Ccrが低値の例では、CPT-11による好中球減少のリスクは増加するが、下痢は差を認めなかったという報告と一致する。即ち、水腎症など腎機能に影響を及ぼす病態は好中球減少のリスク因子となりうる可能性が示された。今後、このような症例に対しては投与量設計を慎重に行い、血液毒性のモニタリングを頻回に行う必要があると考えられる。1)Clin Pharmacol Ther. 2008 ; 84 : 254-62.
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