〈研究目的〉根治切除不能又は転移性の腎細胞がんの治療に用いられるアキシチニブは、AUC_<0→12>が150ng・h/mL以上になると抗腫瘍効果が認められ、無増悪生存期間の延長および部分奏効例が多いことが報告されている。一方、下痢、血圧上昇および手足症候群などの副作用が高頻度に発現し、減量や中止を余儀なくされることも多く、それらの血中濃度との関連は明確ではない。以上のことから、安全かつ有効な化学療法を実施するため、アキシチニブの血中濃度モニタリングが必要であると考えられる。そこで本研究では、カラムスイッチングLC/ESI-MS/MSによるアキシチニブの測定法を確立し、アキシチニブ服用患者において、副作用化現との関連を精査しつつ、抗腫瘍効果の期待できる至適血中濃度維持のための投与支援を実践することを目的とする。 <研究方法>1. カラムスイッチングLC/ESI-MS/MSを用いたアキシチニブの測定法を確立する。 2. アキシチニブ服用患者において、血中濃度測定を実施する。 3. アキシチニブ服用患者において、ABCG2の遺伝子多型(421C/A)解析を実施し、血中濃度との関連を精査する。 〈研究成果>1. カラムスイッチングLC/ESI-MS/MSを用いた測定法を構築することができた。 2. 5名のアキシチニブ服用患者について、服用直前および服用4時間後の2点採血にて血中濃度測定を実施した。抗腫瘍効果の期待できる血中濃度を維持しながら、血中濃度と副作用発現との関連を精査したところ、血中濃度依存的に発現する副作用の発現は認められなかった。 3. 5名のアキシチニブ服用患者について、ABCG2の遺伝子多型解析を実施した。421C/C患者と比較して、421C/AおよびA/A患者においては、低用量服用でAUC_<0→12>150ng・h/mLが担保される可能性が示唆された。
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