急性白血病やリンパ腫などの悪性腫瘍の治療に用いられる高用量メトトレキサート(MTX)療法では、血中MTX濃度の遷延や腎障害の発症によってその継続が困難になることがある。ハイドレーションを必要とする高用量MTX療法では、しばしば利尿剤が併用されるが、フロセミドやサイアザイド系利尿薬は尿を酸性化してMTXの排泄を遅延させるため、その併用を避けることが添付文書に記載されている。一方で、治療上の必要性により併用することがあるが、併用時の尿pHの変動や腎機能障害の発現頻度などの実態は明らかでない。これらの実態および腎機能障害の発現リスクを明らかにすることは同薬による副作用を未然に防ぐことに応用できると考えられる。本研究は、高用量MTXと利尿剤の併用時に腎障害発現に影響する因子を明らかにすることを目的として行った。 筑波大学附属病院血液内科において、2002年~2008年に1g/m^2以上のMTXとフロセミド(FS)またはアセタゾラミド(AZ)を併用し、48時間以内に採血を行った患者を対象にレトロスペクティブ調査を行った。腎障害の判定はAKIN分類を用いた。FS群(22名、31cycle)とAZ群(65名、113cycle)で、年齢、体表面積、MTX投与量、投与前の腎機能、肝機能、腹水・胸水の有無、および尿pH低下によるアルカリ化の回数に差はなかった。血中濃度の遷延はFS群ではAZ群と比較して高頻度に見られた(32.3%vs. 12.4%、p<0.01)。腎障害もFS群ではAZ群と比較して発症率が高い傾向が見られた(12.9%vs. 7.9%)。以上のことよりFSの併用が血中MTX濃度を遷延させ、腎障害の発症率を高めることが示唆された。
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