【研究目的】人工内耳埋め込み術を受けた中途失聴患者を対象に、音入れ後からその6か月間語音聴取能の学習曲線を調査する。本来語音聴取が安定するのは6か月程の期間を要すると言われているが、本研究で聴取能が安定するまで要する期間を明らかにすることで患者の調整頻度の低下、負担の軽減を図ることを目的とする。 【研究方法】音入れ直後とその後1か月毎に6か月間人工内耳調整後、聴力検査を実施する。検査の手順としては、まず自由音場閾値検査により人工内耳装用閾値を確認する。その後CI2004語音聴取能検査を用いて、単語25個、日常会話文15文(60要素)の聴き取り検査を実施、パーセンテージで成績を算出し、音入れから6か月間の学習曲線を調査する。音圧は70dBを基準とするが、患者の聴き取りやすい音圧に随時変更する。 【研究成果】4例に対して追跡が可能であった。全ての例で、装用閾値は30~35dB水平型となった。4例中3例が音入れから2か月以内で単語・会話文とも80%以上の聴取が可能となり、以後の聴取成績もほぼ安定した。蝸牛の形態、失調期間、後迷路障害等、人工内耳の聴取に不利な条件が無い例においては2か月程度で聴取が安定するため、それ以降は調整の頻度を減少させることができる可能性が高いことが明らかとなった。その他の1例は対側耳に高音域の残聴があり補聴器併用例であった。2か月で聴取は安定しなかったため、2か月時点で試験的に補聴器併用を中止した。その後Cレベルを上げることが可能となり、聴取成績が上昇し、4か月以降聴取成績が安定した。対側の残聴、特に補聴効果の比較的高い残聴を認める例においてはCレベルが必要値よりも低くなる可能性があり、その点を考慮し調整に臨む必要があることが今回示唆された。
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